
Joker
★★★★
2019年/122分 #トッドフィリップス #ドラマ
金属腐食の様子を早送りで再生した様な作品。舞台となるベトナム戦争後と現代の経済戦争後は敗北から立ち直れず、もがく状況で共通する。それは政治家の思惑が失敗し経済混乱が生まれ不満が肥大化する時代。まさに破裂寸前の脳腫瘍だ。
ポピュラリズムの話。証券マンの射殺や同僚の頭部撲殺は胸中で声援を送る自分がいた。何時の世も私腹を肥やす富裕層や日常的な裏切者への報復願望は存在する。行動出来ない自己への悔恨も含め、行動を起こす者こそがHEROだ。ゴッサムはデモが暴動化、逮捕されたHEROは暴徒の手で救出される。憧れのMフランクリンショーでの名前紹介が彼の独立宣言だ。
崩壊の話。隣人との楽しい一時、大富豪の隠し子という母の談話、TVショーでの賞賛、全てが誤解と妄想の産物。その事実が一気に押し寄せる。懸命に踏み止まっていた正常の箍が外れ、抑圧した分だけ強い狂気が発動する。脳の障害にとって最悪は健常者の目だ。
演技の話。障害カードを提示し高笑い、延々と続く思い出し笑い。爬虫類の様に肢体をくねらせ、変身した喜びを特異なダンスで表現する。抑圧が鬱積し殺戮という発散が始まる瞬間をホアキンは見事に切り取る。
終焉の話。ジョークを着想したアーサーは精神分析医に貴方には理解できないと説明を断る。人生は悲喜劇ではない。病院脱走時の血痕足跡は、理解不能者への宣戦布告の刻印だ。That’s life!
5スジ4ヌケ5ドウサ4テイジ4コノミ