お引っ越し

お引っ越し

★★★★
1993年/124分 #相米慎二 #ドラマ

両親の離婚を目前に控えた大人に変わる前の少女を描く。心象風景の映像化は相米監督の真骨頂。

居場所の話。三角テーブルは向き合わず寄り添わない三者の距離感。風呂場籠城の抵抗は母が窓を割り決着となるが、これは子供の人格を認めぬ行為。子供はその空間を居場所として選択できない弱者、「何で生んだんや」は当然の主張。旅行先で逃げ出すレンコを父が追い段差で話し合う時、彼女は敢えて立位置を変える。母とも花火大会で橋を挟んで会話する。彼女なりに大人としての居場所を模索している。

水の話。水は彼女の心を写す。家出の前夜はそぼ降る雨、新しい友との外出はゲリラ豪雨、出会った老人からは放水、家族遊泳は海中。形や動きの変化を以て子供の彼女を水が雄弁に語る。

火の話。火は大人の象徴。焼失寸前の家族写真、アルコールランプへの点火、小火騒ぎ、旅行先の火祭り、海中の山車。写真と山車は思い出の焼失を示唆する。彼女は山中の彷徨を経て、自分を抱締め過去と決別、水と火の融合を以て子供から大人に変わる。自分自身に「おめでとうございます」を何度も叫ぶ。大人への通過儀礼が済んだ祝辞を。

無駄の話。不必要な動きこそ生きる証。逆さ吊り、蹴飛ばし、ボクシングの真似、トラック追い掛けに飛び乗り、坂道の自転車押し、小火騒ぎでの逃亡、タンスのワープ。子供は活力に溢れている。無駄を嫌わず遊びとして生命を楽しむ。

4スジ4ヌケ4ドウサ5テイジ4コノミ

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