
Drifting Clouds
★★★★
1996年/96分 #アキカウリスマキ #ドラマ
レストランで給仕長を勤めるイロナと電車運転士の夫ラウリ。貧しくも楽しい日々に突如不幸が訪れ連鎖する。無表情な人物、簡素な展開、固定された視点。様式美に則って、作者は純粋な主張を画面に炙り出す。
人徳の話。夫は妻の為に大怪我をするが一週間安ホテルで過ごす。また妻の夢を実現するべく愛車を売りカジノで逆転を試みる。妻は元同僚からレストラン経営を勧められ、元経営者から資金提供を持ちかけられる。この夫婦は失業しても手当てを申請せず、出かける時は身だしなみを整える。二人の美徳や思い遣り、優しさが未来を育む。
構造の話。夫は不況でリストラ。妻は企業買収で解雇。家電はローンでしか買えない。職安は職を紹介しない。私設斡旋所は高額な斡旋料を請求する。職は安食堂での雑用のみ。給料は税務調査で未支いになる。取立てに行くも袋叩きとなる。家屋は家財含めて差し押さえられる。保証人がいても銀行は融資しない。果たして誰が悪いのか。
赦しの話。コックは厨房で暴れクローク係を怪我させるが、治療費を払い連れ煙草で仲直りする。解雇後はアルコール依存で浮浪者に身を落とすが、レストラン再開で仲間に救出される。罪を憎んで人を憎まず。
余韻の話。開店日、お昼を過ぎても客足はない。夕方混み始め、団体予約も入る人気を見せる。店の前でイロナは煙草を一服、ラウリと並んで雲を見上げる。空には一筋の雲。
4スジ4ヌケ4ドウサ5テイジ4コノミ