フォードvsフェラーリ

Ford v Ferrari

★★★★
2019/153 #ジェームズマンゴールド

かつて栄華を極めた男達の再興と落日。主題は何が起きるか解らない人生で完璧さを追い求める人間の素晴らしさ。元レーサーのビジネスマンで会話上手なシェルビーと凄腕レーサーの整備工員で求道的なケンが多くの障害を乗越え巨大な目標を成し遂げる物語。見所は7,000r/min以上の過回転域タコメーター。監督は本物志向に拘りレース場面は可能な限りCGを廃した。

史実の話。フォードのフェラーリ買収やシェルビーとケンのルマン勝利は真実。創作はフォードがフェラーリに性能では勝てなかった事。彼等は主催者側に倍のエンジンサイズの規定変更を申し立て承認を得た。寺田陽二郎は語る「歴史と伝統という重く見えざるものを破らないと勝てない」。彼等は様々な働きかけで勝つ為の風と勝てる車を作った。ケンもまた65年にフェラーリに敗退、その経験から翌年勝利を修めた。

独創の話。本作は技術の最先端で命懸けの試行錯誤を続けた革新者達への讃歌である。芸術対商業、直感対データが伏線で相反するものが同じ目的の為に手を組んでいく様子を描いた。二人は高いエネルギーを有し大胆不敵に何をしてるか解らないまま突き進む。監督は語る「映画が最高に面白いのはよく解らない事だ」。また『ロッキー』の影響を強く受けた。時には勝利に近づくだけで十分な場合があり、スポーツには単なる勝敗以上に伝えられる独創的なメッセージがある。

戦争の話。フォードは贅沢品を大衆的な物に変え成功を納めた。フェラーリはチームでは常勝も会社では完全手工業制により経営難、エンツォは当初よりフィアットと提携する思惑でフォードを当て馬とし企業価値の高騰を目論んだ。それに激怒した二世が復讐の為にレースに参戦。レースの進出理由が商業、勝利理由が報復とは米国らしい話、当時は米国対伊国の疑似戦争と揶揄された。

打算の話。彼等の真の敵は企業社会。フォードの幹部にシェルビーは振り回され、ケンはルマン出場不可を宣告された。会社の経営陣は各々の思惑で動いている。アイアコッカは後に社長に就任、二世の次期社長は後の国防長官マクナマラ。企業自体が米国自体を具現化する価値を持つ。

純粋の話。身勝手な男達は過酷な環境の中、純粋に一つの目標を目指しチームワークの大切さに気付いて成長を遂げる。シェルビーは後年会社を設立しデザイナーとして活躍、彼の名を冠したコブラやGT350や500は名車となる。またアイアコッカ発言の「ボンドはフォードに乗りません」は71年に『007ダイアモンドは永遠に』のフォードマスタングで覆された。

家族の話。モリーは経済的な価値より個人の尊厳に重きを置く素晴らしい女性。彼女が自家用車で暴走し感情を露にする場面は感動的である。ピーターは父のファン第1号、シェルビーの「ケンは友達だ」は子供を救済する未来への最大の賛辞。家族の愛と理解が彼の夢を実現させた。

4スジ3ヌケ4ドウサ3テイジ4コノミ

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