ダンス・ウィズ・ウルブズ

Dances with Wolves

★★★★★
1990年/181分 #ケビンコスナー

主題は「狼と踊る男」。彼は先住民スー族との交流から真の人間らしさに目覚め劇的な変貌を遂げていく。見所は「風になびく髪」との別れ。彼が崖の上から高らかに叫ぶ「何時までも何処にいても友達だ」。原本はマイケルブレイク。

変身の話。ジョンダンバーは自殺を決意して敵地に乗り込んだ南北戦争の英雄。失われる前のフロンティアを一目見る為にセジウィック砦への赴任を直訴し自給自足の生活を始める。米国の歴史でインディアンは野蛮な未開人、社会を脅威にさらす異端者として位置付けられ排除の対象となっていたが、本作での彼等は真逆の存在。彼の視点は次第に白人からインディアンへと移り、インディアン達は名も顔もない敵対的な記号から同列位置の仲間へと変わっていく。

反古の話。様式は西部劇ではなく冒険劇。90年台の映画は予算内、2時間内、英語使用と3つの制約が存在、その為に本企画は米国全ての映画会社から却下される。彼は活路を外国資本に求めオリオンと協賛企業から約21億円の予算を受け製作を開始するが撮影は難航を極めハリウッドでは「天国の門」に因み「コスナーの門」と嘲笑、約4億円の超過分をケビンが私財を投げ込み完成に漕ぎ着けた。作家の情熱とあらゆる制約の反古がオスカー7部門獲得、米国立フィルム登録簿入りの傑作を誕生させる理由となった。

醜態の話。白人は無知で強欲な存在。先住民の土地を侵害し毛皮狩りの為にバッファローの殺戮を繰り返す。彼等の通った跡には皮を剥ぎ取られた死骸が横たわる。ジョンがスー族の服装で前哨地に戻ると騎兵隊は彼に対し発砲を始め相棒の愛馬シスコを射殺する。新たな親友となった野生の狼は拘束護送される彼を遠目で見守る。その狼トゥーソックスを騎兵隊員は先を争う様に余興として射殺する。スパイヴィーは彼を証明する全記録の日誌を盗む。兵卒の白人は異人種を人と認めない文盲で無学な存在、日誌は用足後に使用する紙の価値しか持っていない。

縁由の話。マイケルは完成脚本の映画化を友人のケビンに相談、チェロキーの血を受け継ぐケビンは作品に共感し小説化を進言、30社以上の出版社に拒否されるが88年遂に地方出版社より世に出る。彼は執筆当時にヴィゴモーテンセン夫妻の家に居候しており原作は夫妻への新婚祝い、主人公はヴィゴ想定のキャラクターである逸話が残っている。

記録の話。本作最大の難関はバッファロー、スタント無しで3600頭を撮影した事は奇跡に等しい。狩猟場面は8日を要しCG無しで突進する大群を映像化、OREOを餌に調教した秘話も残されている。また数多のインディアンや300頭越えの馬を巧みに操った点も特筆に値する。狼の唸声を引出す為に奇声を発し野生を呼覚ます彼等の奮闘記録もあり作品は努力の結晶。この13年後バッファローやスー族は自然の淘汰を受けて絶滅した。

5スジ4ヌケ5ドウサ4テイジ5コノミ

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