マッドマックス 怒りのデスロード

Mad Max: Fury Road 

★★★★
2015年/120分 #ジョージ・ミラー

主題はフュリオサによるジョー最期の質問「私を覚えてる」。これは復讐が成功した歓喜の瞬間。見所はエッジアーム。アーム約7mのクレーンは全方位稼働、危険場面も確実に捉える優れもの。原本は神話学者ジョゼフ・キャンベル「千の顔を持つ英雄」。本作は人間性を取り戻す男、過去を捨て英雄として凱旋する女、人となり人として死ぬ子供から成る神話である。前作から約30年、企画12年となる監督の悲願作。

構成の話。地下水はアクアコーラ、母乳はマザーズミルクで呼称され独自の世界観を造り上げた。ウォーボーイズはジョーの私設軍隊でウォーパプスと呼ばれる戦士見習員で構成、環境汚染から寿命は約40年、名誉の戦死から英雄の館に招かれ転生すると信じる好戦的集団。死を賭ける時は口許に銀を吹く儀式を行う。ドーフウォリアーは私設軍楽隊、ジョー搭乗ドーフワゴンで出動し演奏行軍する。ガスタウンは人食い男爵管理下の要塞都市で戦闘員はポールキャッツ。緑の地は東方の遠方集落、鉄馬の女達が管理している。

思想の話。監督はCGを必要最小限に抑え本物に拘った。彼は「物理法則に逆らう類の映画じゃない」と宣言、熱狂的ロックコンサートとオペラの中間で、ヒッチコックが語った日本人が字幕なしで理解できる映画を目指したと語る。何度か登場する少女の亡霊はマックスへの神の啓示、彼女は神話上での堕天使の役割を果たしている。

幇助の話。マックスは自我を喪失するが仲間を助けフュリオサに輸血を施し援助を重ねる事で自分を取り戻す。彼は一貫して人との関係を遮断しながら旅を続けているが関わりで伴う痛みを避ける為の行為が自己を見失う結果をもたらした。初対面の二人は衝突するが次第に認め合い最後は意志が重なり合う。彼は口枷から自らで名乗りを挙げる状態へと成長を遂げる。

女性の話。フュリオサは『マッドマックス2』の女戦士がモデル、世紀末の中でも希望を捨てず女性の生存法を模索する女性。彼女は子産み女からジョーの機嫌を損ね左腕を失うが、戦士に生まれ変わり功なり名を遂げる。設定は赤毛もシャーリーズの提案から丸坊主に変化した。ワイブズ達の決断と受容はフュリオサが女性なればこそ、緑の土地も利害があれば平等も成立も難しい。ワイブスは5人の女性スプレンディド、トースト、ケイパブル、ダグ、フラジールで構成せれ全てジョーの本妻ながら慰み者となる囲者。女性達は解放の為に旅に出る。

悪役の話。ニュークスは今を楽しむ事や愛の尊さを教えてくれる。彼はジョーに忠誠を誓い名誉の死を望んでいたがケイパブルと出逢い彼女の優しさに触れ生きる意味を見出だす。イモータンジョーは世界の秩序を守る為にライフラインを制御、民衆を支配する政治家で彼が悪の権化かと言えば必ずしもそうでは無く富の分配法に間違いがある。フュリオサも暴君の可能性を秘めている点も見逃せない。

服装の話。服装は人間性の変化と比例する。マックスは口枷から革ジャンを経て全装備獲得、ニュークスは裸から革ジャンを経て靴獲得、ワイブス達は貞操帯から解放され鉄馬の女達から服を獲得した。フュリオサの義手は毒の嵐脱出後と緑の地喪失の了知、ジョー殺害後に解脱される。装着時の彼女は戦士で安堵や絶望と解放といった感情の変化に伴い戦士から人間に立ち返る。また着衣は人間の成熟度を現す。薄着は未熟で成長の余地を残す者、善人の場合は人としての完成度を示している。

権威の話。物が存在しなくなった世界でジョーだけは複数の物を所有する。愛車は重なるロールスロイス、銃は複丁リボルバー、水源は左右2つのレバー、贅沢は彼の権威を暗喩する。血液袋は冷蔵技術がなかったコソボで囚人から実際に輸血が行われナチ親衛隊は脇下に血液型タトゥーを彫っていた。人間の愚行を証明する実話。

4スジ4ヌケ5ドウサ4テイジ4コノミ

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