
ツレがうつになりまして。
★★
2011年/121分 #佐々部清
主題は晴子の一念発起、ツレに宣言した強烈で愛に溢れた一言「辞めないなら離婚する」。見所は晴子が自殺未遂をしたツレに涙混じりに語る謝罪の弁「ツレはここにいていいんだよ、ごめんね」。原作は細川貂々の同名漫画。キャッチコピーは「ガンバらないぞ!健やかなる時も病める時も君と一緒にいたい」。原作は独創的。鬱病を宇宙カゼと表現し、頭には憂鬱キャッチのアンテナが現れる奇抜性。
反省の話。髙崎晴子は売れない漫画家。夫であるツレはPCサポートセンターで苦情処理担当。毎朝弁当を作り曜日別にネクタイとチーズを入替える神経質な真面目男。彼が頭痛を訴え呟く「死にたい」。通院結果は鬱病、神経伝達物質の放出量不足で情報伝達が行われず落ち込んだ状態から脱出できない状況。彼女はツレが以前から訴えていた食欲不振や頭痛、背中痛を聞き流していた点を謝罪する。
理解の話。ツレは鬱病を部長に相談するが一蹴「皆忙しくて鬱病みたいなもんだからリストラにあった人達の分まで頑張れ」。晴子は治療には休養と食事が大事と学習し効果の見込めるセロトニン増幅食を用意する。晴子の母親は鬱病完治の知人が自殺した話から彼女に油断しない様に進言する。病院の先生は鬱病は良くなったり悪くなったりを繰り返す為、油断は禁物「鬱病は振り子のようなもの」と忠言する。完治には周囲の人達の理解が重要である。
愛情の話。晴子はツレが眠れない相談に素直に答える「私はイグと同じように昼寝してるよ」。彼は自分を責めて布団の中で涙の日々を過ごしながら呟く「申し訳ない」。二人は夫婦揃って結婚同窓会に参加し1年前には参加出来なかった思い出と晴子が支えてくれた事への感謝を語る。皆からの拍手は暖かい。
思遣の話。ツレが回復を見せる反面、晴子の仕事は多忙を極めていく。晴子は話し続ける彼に堪えきれず苛々をぶつける。一仕事を終えた彼女が彼を呼ぶが、その姿は何処にもいない。ツレは自殺を図ろうとしていた。彼は晴子が遠い存在になったと感じると共に、自分が無価値になる事を恐れて風呂場で首にタオルを巻いた。言葉は凶器となる。
理由の話。冒頭で晴子は連載中止を宣告され、その理由を読者アンケートの結果という他責にしてしまう。彼女はツレが鬱病を患い生活の窮地に立たされて行動を始める、出版社に行き頭を下げ助けを求める「ツレがうつになりまして、仕事を下さい」。鬱病経験のある編集者が自己啓発本のイラストを依頼、そして編集者は彼女が描きたい物を描いていない事実を見抜く。当初理解出来なかった理由を明らかになり、彼女は自分を表現し始める。
感謝の話。晴子は母親の進言から野菜中心の料理に変更する等、苦労を重ねるがツレの病気は一向に改善しない。ツレは晴子の意を汲み退職を決意し宣言する「出来ない事はしない無理はしない」。退職の日、晴子は彼と同じ電車に乗り、彼が長年通った途を辿る。晴子は今迄知らなかった満員電車のストレスを感じてツレに感謝を伝える「明日から乗らなくていいんだよ」。二人の頬を涙が伝う。
協業の話。チビと命名した亀が加わって家族が増える。晴子が描きたい物は身近になツレにイグやチビ。晴子は8頁の新連載を始め、同名本の出版も決める。出版に当たりツレは毎日記していた日記を彼女に渡す。出版された本は大ヒット、ツレの病気も緩やかながら快方に向かい、彼は晴子のマネージメント会社ハシゴ髙を立ち上げる。
講義の話。ツレに講演の依頼が入り、彼は迷いながらも参加を決める。講義は「あとで理論」。「あ」は焦らず焦らせない。「と」は特別扱いしない。「で」は出来る出来ないを見極める。聴衆の一人が立ち上がり本を製作した事への感謝を伝える。ツレはその声を聞いて勤め人時代のクレーマーと気付く。鬱病は誰でもかかる病気である。恥ずべき事では無い。
2スジ3ヌケ2ドウサ2テイジ3コノミ