
CHEF
★★★★
2014年/115分 #ジョンファヴロー
主題は料理評論家発言「昔のあんたは俺の憧れだった」。カールとラムジーの和解は本作の救い。ラムジーを敵として終わさず恩人で礼を尽くした終幕は愛に包まれている。見所はモリーへのペペロンチーノの振る舞い。食は官能的な行為で基本欲求である。原本はオリジナル。
投影の話。オーナー発言「ストーンズのコンサートでサティスファクションを聴けなかったら」。出資者と運営者の敵対は万国共通。永続は固執ではない、革新であり模索である。監督はアイアンマンの興行成功から一転、2やカウボーイ&エイリアンの失敗でプロデューサーとの関係を悪化させた。本作は彼がアイアンマン3を蹴って望んだ意欲作、決め手となったのは最終編集権の獲得。彼はグルメフードトラック運動の創始者ロイチョイに師事、本作は彼等の人生観も投影する。
悲劇の話。カールは独創的な料理を望むが雇用主がそれを許さない。常連客が喜ぶ料理を提供した事に対して有名批評家は辛辣なる言葉を容赦なく浴びせかける。彼は堪らず暴言「お前はただ食べて悪口を言っているだけ、こっちは命懸けで料理を作っているんだ。スタッフだって一生懸命なんだ」。映像がSNSで投稿され忽ち拡散、解雇から転落する憂き目に会う。
家族の話。カールはレストランを解雇され息子パーシーとのニューオーリンズ旅行の中止も余儀なくされる。元妻イネズは旅費の代わりとしてパーシーの子守りを依頼し彼をフロリダへと誘う。パーシーが窓辺で心配そうに成り行きを見つめる。家族はまだ離れず繋がっている。
息子の話。パーシーはSNSに精通する聞き分けの良い子供。大人的には都合のいい存在だが実は過剰に周囲に気を払い我慢を重ねている現代っ子を象徴する。彼はトラックの汚物清掃を命令され仕事を放棄した。元彼女の意見もあって父は彼を一人前の大人として扱い彼の成長が始まる。
再生の話。カールはフロリダでキューバサンドイッチに感動。元妻の激励「貴方ならもっと美味しいサンドを作れるわ」を受けて営業開始を決意。元妻の最初の夫からの援助を受けて中古ながら厨房付フードトラックを入手する。レストラン時代の部下マーティンが合流、息子も夏休みだけの約束で手伝いを決めチームが誕生する。3人だけのひと夏のLA旅行が始まる。
姿勢の話。最初の客は機材搬入を手伝ってくれた作業員達。不注意で焦がしたサンドを無料を理由にそのまま出そうとする息子に父は問いかける「パパは料理が好きだ。料理で人をちょっと幸せに出来る。それがパパの喜びなんだ。あの焦げたサンドをお客に出すか」。息子は答える「もう出しませんシェフ」。ここに創造主の姿勢が見える。
宣伝の話。父のアカウントで息子がフードトラックを宣伝する。ニューオーリンズではご当地ドーナツ、テキサスでは数日を要して丁寧に焼く肉塊等、その土地でしか調達出来ない食材を取り入れ、場所も宣伝する。ここで解雇原因となったSNSが大活躍を見せる。瞬く間に評判も拡散し各地で行列が出来る人気店に成長する。
希望の話。行列客の中に因縁の辛口評論家を発見、一触即発の状況に周囲もざわめく。しかし彼はカールに厨房内の全権委任を条件にレストランの共同経営話を持ちかける。過去に囚われず未来に向かって行動する事で道は開かれる。人生は悪役不在、前向きに進む素晴らしさを力強く提示する。
手伝の話。パーシーのトラック旅と夏休みが遂に終わりを迎える。LA到着前日、父は息子に声をかける「明日からはまた現実の世界に戻らなければならない。お前にはまだ学校で学ばなければならないことがある」。彼の日記は道中の1日1秒動画。動画を見た父はママの了解をダシに付け加える「週末だったら手伝いに来てもいいぞ」。二人は確かに繋がっている。コック二人が立つ厨房、楽しく笑う父子が見える。
配役の話。豪華な出演者が脇を固める。厳格な経営者リーバにDホフマン、色気満点のソムリエ元彼女モリーにSヨハンソン、元妻の最初の夫で奇抜な富豪マーヴィンにRダウニーJr。全て主役級の役者、敵と味方を明確にし役者のイメージを物語に反映させた配役はドラマ版アベンジャーズ。
4スジ4ヌケ4ドウサ4テイジ5コノミ