
Bird Box
★★★
2018年/124分 #スサンネビア
主演はマロリー#サンドラブロック、トム#トレヴァンテローズ、ダグラス#ジョンマルコヴィッチ、ジェシカ#サラポールソン。
主題はトムの言葉「実現しない夢でもいいから人は明日死ぬかの様に誰かを愛する。そんな夢や希望や母親が必要」。マロリーが孤立を深め娘を犠牲にしたならば彼女は“何か”を見ても生きられる人間に堕落する。
見所は車でスーパーに物資調達に向かう場面。視覚ゼロでの運転もナビとセンサーを駆使して目的地に向かう。車中という閉鎖空間は緊張感を倍増させる。
原作は#ジョシュマラーマン の同名小説。#Netflix。
影響の話。1週間で4500万人以上が視聴した人気作。本作の影響から目隠しで何かをする様子を撮影し動画をSNSに投稿するバードボックスチャレンジが流行、これが発端となりでNetflix側より中止要請が出される事態に発展した。
関心の話。マロリーは子供達に目隠しは絶対に外さない事を何度も指示し、決死の覚悟で希望の地への船出を果たす。この旅こそ彼女が母親になる為の大きな試練。彼女は自宅に引籠り自分の好きな絵画だけを描く生活を送り外部の喧騒にも身籠っている赤ん坊にも興味がない。彼女は担当医から養子縁組を勧められる極めて排他的な女性。
脆弱の話。マロリーの絵画「孤独」はラファエロ「ヒワの聖母」がモチーフ。七人が俯き卓を囲んで一点を見つめている。全員が一同に介しているが当てられる光の照射角度が違う為、異なる場所にいる錯覚に陥る。近年、SNSやメール等のオンラインが卓上を占拠し人と人との繋がりは希薄化が進む。人間関係は通常、全員が同じ場所でお互いの顔を見て保たれるが、現代社会では相手の顔は目前から消失、見ず知らずの相手との関係が主流となった。マロリーは絵画を繋がりのない人間関係と言及、正体不明の敵の前で繋がりを持たない人間同士は脆弱な存在。
負債の話。マロリーは人間関係を煩わしく感じており親子関係も同様と捉えている。自分の子供達を本人の為と言いつつボーイやガールと呼んで人間性を否定する。また子供達に夢や希望を持たせず、愛着や思い遣りの感情も出さない様に育てる。その信条は血縁なきガールへの犠牲を強要し、それを悟られた時点で崩壊する。
排他の話。彼女の意味は生きる事だけ。生の本質に興味はなく名前も他者との違いを判別するだけのもの。結果的に彼女は見える物が全て、見えない物への価値は見出だせない。希薄な関係に慣らされた排他的な彼女は濃密な関係を作れずに今を生きている。彼女が与える子供達への負の要素は計り知れない。
社会の話。グループは二派閥に分断、マロリーを中心とする社会派とダグラスを中心とする個人派。但し社会派が正で個人派が悪という構図には至らない。両派閥に共通するのは自らを含む集団を護ろうとするもので、その力は寧ろ個人派の方が強く周囲との協調や人間としての体裁等に囚われている社会派は本来の目的から逸脱する傾向が見られる。トムやオリンピアはマロリーの守護天使的役割を果たし派閥を牽引する力を有していない。
報復の話。本作は視点を変えれば人間が鳥を始めとしたペットに対する仕打ちに報復される話となる。人間が自分達の為に動物を愛玩として篭に入れた様に、実体なき脅威は愛玩の対義となる嫌厭を人間に課する。人間達を嫌厭し建物内に幽閉する。この世界では健常者が淘汰を受け、心に闇を抱える者や盲目等の障害者が生存を果たす。強き者達が絶滅する未来は我々の恐怖を加速させ改悛を促す。目に見えない脅威の実体は呈示されずに物語は終焉を迎える。
打開の話。”何か”は最後まで解明されないが、それは人間が元来持ち合わせている感情を揺さぶり次第に負の部分に誘導していく悪魔的な仕業。何かに打ち勝つには冷静に自分自身と向き合う事が必要となる。スーパーの店員チャーリーは語る「宗教や思想では悪魔や霊魂が存在する。恐怖や悲しみを利用して人にとりつくんだ」
未知の話。マロリーが遂に新世界へ辿り着く。彼女は子供達に名前を授けて親子の絆を再発見する。一見、大団円も本作で最も重要な存在となる鳥達は篭や箱に囚われた状態で最大の特徴となる飛翔を制限され一生を終えていく。マロリー達も恐らく盲学校の中から出る事が出来ない。人間達も施設に囚われた状態で最大の特徴となる視覚を奪われ一生を終えていく。希望は人間の発想力、未知の能力にすがるしか道はない。
3スジ3ヌケ3ドウサ4テイジ3コノミ