
Gerald’s Game
★★★★
2017年/103分 #マイクフラナガン
主演はジェシー#カーラグギノ、ジェラルド#ブルースグリーンウッド、レイモンド#カレルストレイケン。
主題はレイモンドへの一言「思ったよりずっと小さいわね」。彼と父や夫の顔が重なる。彼女は遂に本物の自由を手に入れる。
見所は父の囁き「マウス」。抜け出したい解放の瞬間、消去したい記憶の奥で彼女は再びその言葉を耳にする。原作は#スティーヴンキング の同名小説。
手枷の話。ジェシーには二つの拘禁が課せられる。一つは受動的で物理的な手錠、もう一つは能動的で精神的な記憶。手錠は冷めた夫婦仲の復活が目的で、記憶は幼少期の性的虐待からの解放が目的。手錠も記憶も手枷は強く解放への道筋は険しい。解放に向けて手錠は幻影、トラウマは記憶との戦いを強いられる。何れも痛みを伴うが妻は決断、呪縛から解放される。
連鎖の話。ジェシーは父の性的虐待により沈黙という大きな拘禁を課せられる。この事が夫や友人への背徳感となり本当の自分を晒す事に歯止めを掛けてしまう結果となる。また彼女は夫から結婚の名目で安心感という偽りの拘禁も課せられる。彼女が夫の幻影に呟く「貴方の為に子供も持たなかった」。彼女は結婚指輪をレイモンドに渡してしまう事で解放へと突き進む。
拘束の話。ジェラルドは念入りに準備し妻ジェシーと夫婦のマンネリ化解消に向けて郊外の別荘で余暇を過ごす。休暇の目玉は手錠プレイ、妻は夫に最初は我慢し付き合うが途中から口論に発展、そして突然夫が妻をベッドに拘束したままバイアグラの副作用による心臓発作で他界する。
交錯の話。運転途中の道路で野犬が死骸を漁っている。そして餌を求め山小屋にも現れ妻は一切$200の高級肉を与える。二人は玄関を開放したままで屋内に入り事故に遭遇、ジェシーはベッドに拘束、外には野犬徘徊は餌の見返りによる救出の期待と高級肉の味覚えによる襲撃の恐怖が交錯する。野犬は夫の死体を食し始める。
死神の話。ジェシーは疲労と脱水に襲われ意識朦朧の中、目前にジェラルドが現れ手錠も外れる。それは彼女の幻影、自身の姿も現れる。彼女は疲労の末に眠りに落ち真夜中に目を覚ますと巨人が凝視し彼女に近付き骨や小物が入る箱を見せ立ち去る。翌朝彼に「あれは死神だ」と告げられ彼女は混乱する。
日食の話。ジェシーは世界が紅く染まる皆既日食過去を思い出す。その日は父トムに性的虐待を受けた記憶から消したい日。彼女は父と向き合う事で手首の切断を思い付き成功、見事開放される。玄関に出ると其所に巨人、彼女は指輪を差出し難を逃れる。街に車を走らせる途中、事故に遭うがその事で救助される。
救済の話。ジェシーは財産を相続し何不自由の無い生活を送る。警察から夫の死は事故死、死神は記憶喪失として処理。彼女は相続した財産の一部を自分同様に虐待に苦しんでいる子供の救済に充てるが死神が何時までも心に引掛かる。
変貌の話。半年が経過し新聞に墓荒らしで死体の一部を集める犯罪者レイモンドの記事掲載、彼は死神に瓜二つ、彼女は真実追及の為に裁判所へ向かう。彼があの夜の彼女の言葉を繰り返す「貴方はいない貴方は月夜の幻よ」。彼女は過去に別れを告げ裁判所を後にする。
解放の話。ジェシーは長目のスカートを着用、これがトラウマの深度を暗喩する。お気に入りの短いスカートは皆既日食という特別な日を最悪な日に変えた物。この日以来、彼女の時間は止まっている。性的虐待は彼女のその後に影を落としトラウマを生み出す。手錠に繋がれた彼女は夫や自分の幻影と対話しトラウマと向き合う。幼き日の自分が父に課さられた沈黙を破壊し父の虐待や母の見て見ぬ振りを雄弁に語り始める。
異常の話。妻は手首を切って血を抜き流し出してオイル代わりに滑らせ手錠から抜け出る。思い出したくなかった記憶が脱出する糸口へと繋がる。トラウマの克服は過去の事実と向き合う事、それが逃れられない現実から脱出する決め手となる。彼女は手の皮を捲りながら脱出に成功する。
幻影の話。あの夜の自分や夫、死神が幻想なら全ては解決、しかし死神に渡した指輪は警察の捜査で発見されない。彼女は過去のトラウマから脱出する為に新たなトラウマを作った。それは彼女が拘束時に目にした死神の存在、彼女にとって死神の夫による操作は新たな火種となる。死神は巨人で顔や手が肥大化した末端肥大症の怪物、彼が実在した事で彼女は救われる。
連鎖の話。別荘を後にする時、ジェラルドは手を振り別れを告げる。過去に向き合い父が課した沈黙を破り同じ体験をする子供達に真実を語る事で彼女は徐々に解放へと向かう。トラウマを克服し生きることに希望を持った瞬間、死の恐怖も感じる。新たなトラウマも真実に目を向ける事で解決するしか道はない。幼き日の自分と二人、皆既日食の下で手紙を読む「怪物から守ってくれるべき人達が怪物になってしまったから」
4スジ4ヌケ4ドウサ4テイジ4コノミ