ルディ・レイ・ムーア

Dolemite Is My Name

★★★★
2019年/118分 #クレイグブリュワー

主題はルディの情熱的な言葉「映画さえ作れれば肌の色が何色だって構わない」。 見所はパートナーとなるリードをバーの痴話喧嘩で見初める場面。彼女がルディに何度か見せる感謝はチームが本物である証。

原作はオリジナル、Netflix作品。主演はルディ#エディマーフィ、ダーヴィル#ウェズリースナイプス、レディ#ダヴァインジョイランドルフ

文化の話。50年代に活躍した実在の人物「ラップの父」で喜劇人兼歌手の伝記。70年代初頭にHW参入を果たしたルディは業界の常識を破壊しブラックスプロイテーションに発展、新派の主演は黒人で舞台はゲットー、合言葉は麻薬、客引き、狙撃手、アフロ、高級改造車。BGMはファンクやソウル、腐敗警官や政治家等のHonkyと呼ばれる否定的白人が定番。起源は71年「スウィートスウィートバック」、代表作は「黒いジャガー」「コフィー」

俳優の話。エディはルディの実像に迫りながら彼らしさを残したスラップスティックな演技を見せる。俳優ダーヴィルマーティンは当時下降線の役者で「ローズマリーの赤ちゃん」出演も端役で彼本人をウェズリーが演じるのもアイロニカルな話。脚本家キーガンマイケルキーは能天気なエディの引立て役で真面目さで対比を見せる。終幕字幕のチャーリーマーフィーは故人でEマーフィーの実兄、エディにコメディアンを勧めた恩人。

新派の話。本作は50年代に実在したコメディアン兼歌手を描く伝記。70年代初頭のハリウッドでルディは常識を破壊しブラックスプロイテーションとして一世を風靡する。それは黒人によるファンクやソウルを使用した物語。71年「スウィートスウィートバック」を始まりとするインディペンデント映画で「黒いジャガー」「コフィー」が代表作。舞台はゲットーで合言葉は麻薬密売、客引き、狙撃者、アフロ、高級改造車。またHonkyと呼称され否定的白人登場が定番。

運命の話。ルディは自作曲「ザバギーライト」「リンリンドン」をDJに売り込むが叶わぬ夢と拒否される。そして運命の浮浪者リコが来店、ドールマイトの話を始める。彼はその話にオチを付けクラブで披露し拍手喝采を受ける。彼が高らかに叫ぶ「我が名はドールマイト」。ここに希代のコメディアンが誕生する。

映画の話。ルディはレコーディングパーティを開催してレコード会社に曲を持参するが下品を理由に却下される。それでも諦めず自主販売を敢行、ビルボードでチャート入りの奇跡を生む。次に狙うは映画スター、誰も彼を止められない。彼は何とか映画を完成させるが映画会社からは外方を向かれ上映の目処は立たない。半ば諦めの中、アップタウン劇場を紹介され1回限りの約束で上映実現。不安の中で上映日を迎える。劇場前には長蛇の列、支配人と交わす会話は感動的。

奉仕の話。ある日、大手会社ディメンションフィルムからドールマイト契約の申し出が飛込み作品は全米で上映される。ルディは公開初日に会場に向かう車中でドールマイトの悪評に落込むが会場には大行列。彼は上映会に参加せず映画待ちの人達を楽しませる。

継承の話。本作は自己確立であり伝統を継承させる物語。元来スタンドアップコメディはホームレスネタ素材で創作が正統なる伝統、それが継承され進化を遂げる。終幕で彼はファンの子供にギャグを継承し彼なりの世代交代を果たす。ブラックムービーの伝統として影響を受けて育った芸人は数え切れない。

機会の話。ダンバーホテルは黒人社会で麻薬を象徴する負の遺産。此処をスタジオとする為、地域の黒人総出で改装する様は機会さえあれば復帰可能な社会を隠喩する。そしてUCLA映画学部のNFスターンバーグ達学生を召集し人種を超えた創作が始まる。因みに彼は「嘆きの天使」「モロッコ」の監督ジョセフフォンスタンバーグの息子。

人種の話。ルディの黒人の為の映画作りは商業主義の映画会社とは明らかに一線を画する。難関を乗り越えての映画完成は多様性を受容すると共に達成感の素晴らしさを皆に与える。自主上映の満員御礼、大成功は人種間ネットワークの賜物で感動的な名場面。

讃歌の話。本作は映画製作者達への讃歌に溢る。仲間で集まり話題映画「フロントページ」を観賞、映画は白人達に大ウケも自分達は少しも面白くない。黒人達はエロもカンフーもない映画に不満を抱き自分達の映画作りを思い立つ。此処にはコミュニティ内での人種貢献の意図が感じ取れる。

性別の話。ルディは女性視点を持合わせており蔑視を巧みに回避、性的差別の絶妙なバランスを保つ。ストリップクラブでの扱いやリードの勧誘、ベッドシーンの一幕等、女性を性の対象として描かない。レコードジャケット撮影等、男性も含めて裸体を一つの道具として取り上げている。

異例の話。ルディは08年81歳で他界、生涯未婚のままで酷評も気にしなかった。彼は「自分達が楽しいと思う映画が最高」を旗印に人生を全うする。「ドールマイト」の最終的な興行収益は$1000万を超え自主制作では異例のヒットを記録した。

4スジ3ヌケ5ドウサ4テイジ4コノミ

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