イット THE END “それ”が見えたら、終わり。

It: Chapter Two

★★★
2019年/169分 #アンディムスキエティ

主演はビル#ジェームズマカヴォイ、ベバリー#ジェシカチャステイン、ベン#ジェイライアン、ペニーワイズ#ビルスカルスガルド、特別出演#スティーヴンキング

主題はビル発言「自分のせいで死んだのでは無い」とベバリー発言「もう私はあなたのものではない」。ビルもベバリーも深い悲しみと後悔を抱きつつ過去のトラウマを払拭する。

見所はベンとベバリーのキス。ベンはビルに劣等感と嫉妬を抱いていたが自分が書いたラブレターに自信を持ってベバリーへ告白する。そして個の物語が昇華しペニーを追い詰め言葉で打倒する。

原作はキングの同名小説。ロシアでバーガーキングが上映中止裁判、豪州で広告看板の撤去等、世界中で社会現象が報告される。キャッチコピーは「また、会えたね」

参加の話。我々はルーザーズクラブに参加しITに対峙、前作の謎を回収する。その町で子供が消える訳、27年周期で事件発生の訳、ITの正体と目的等、疑問を起点に観賞すればより本作が楽しめる。前作登場の子供達も数多くの見せ場が用意されており再会も楽しみの一つ。

現在の話。死闘を繰り広げ血の誓いで別れた過去。デリーを離れて27年、大人になった彼等はITの存在を忘れている。ビルは人気脚本家、ベバリーは富豪妻、リッチーはコメディアン、エディはコンサルタント、ベンは二枚目社長へ転身する。マイクはデリーに残留し皆を召集する。メンバーは中華料理店で再会するがスタンは直前自殺し此処に来ない。

意図の話。本作は抜落ちた記憶の一部を拾いながら子供時代の回想を挟み進行する為、大人達が失った記憶を遡る帰省の旅と連動する。ペニーの脅かし方は豪華さを増し恐怖よりも悦楽が上回る。恐怖が道具で扱われる時代に監督は我々に「糞野郎を信じるな」と「皆で団結し嘘や分断に立ち向かえ」と提示する。

差別の話。リッチーはコメディアンになっているが実はゲイ、冒頭のゲイ青年殺人事件は迫害や性差別も恐怖と提示する。同窓会では彼が結婚話を聞き相手は女かと茶化したり、性の下ネタばかりを語るのもゲイを知られない為の対抗手段と見られる。

儀式の話。マイクは調査の末にペニー撃退法となるチュードの儀式を発見しビルが戦闘を宣言しメンバーも覚悟を決める。儀式には自分の思い出の品々が必要、彼等は各々で忘れていた過去と向き合う。しかしペニーが罠を仕掛けて待ち伏せる。
潮流の話。べヴァリーは27年前の戦禍後にメンバーを繋ぎ止める為に全員の童貞を奪い全員と素晴らしい経験を共有する。身体的精神的な繋がりを持ち連帯を強めようと努力する。本作ではカットされ代わりにスタンが橋渡しをする。彼は失われし者達と連帯し戦争に臨める様にお膳立てし自害、そして親友スタンはメンバーと一緒に戦う。新解釈は新たな潮流を生み出した。

賛否の話。本作は原作を否定する。原作一巻の大半は作者の過去を基に記載しビルはキング自身を現す。彼は結末が酷いと揶揄するが此は自己批判、ビルは語る「多くの人がハッピーエンドを望むが必ずしもそうなるとは限らない」。原作ではビルの妻が訪れてペニーの死光を見て意識不明となり賛否両論の騒ぎとなった。

二軸の話。キングはシャイニングで激高した事から映画化は鬼門、本作ではシルバー発見のショップ店長でカメオ出演し本人が本の結末が酷いと批判、原作者公認を明示した。その理由は初版86年と現在の時代の変化、原作で彼は夢でシルバーに乗り妻を背負って爆走する。当時の夢は彼の決意であり幸福論追求の結果と推察する。本作は作者自身を2つの時間軸で描く作品となる。

勝利の話。ショーウィンドウには亡きスタンも一緒に写る。ルーザーズは負け犬達から失われし者達に成長しペニーに戦いを挑み勝利する。デリーを離れてもペニーの記憶が失われない終焉は負け続けた者達、失い続けた者達が勝利した瞬間。クラブメンバーはもう何も失わない。

立場の話。チュードの儀式は原作の解釈を変え物語の構造に組み込んだ。彼等が儀式の為に思い出の品物を集めデリーを冒険する展開は意を強くする。マイクが壺絵をナイフで書き換えペニーに勝利する為に儀式に臨む設定はマイク自身の存在価値を上げ彼の立ち位置を明確化させる。

信用の話。メンバーは必勝法を閉ざされ残された道はペニーに勝利する事が出来ると信じる事だけ。メンバーはペニーにべヴァリーが死光で全員が命を落とす幻影を提示されるが、この恐怖を超越し団結力をペニーに向け立場を逆転させる。大切な事は外部に救いを求めず自らの内部を信じる事。

克服の話。作者が幼少期を思い出し語る「子供時代は甘酸っぱい秘密を沢山持ち死を真直ぐに見つめている、そして死あればこそ勇気と愛なのだ」。大人は暗い過去に向き合う事を避け切り離して生きる。逃げ続けても記憶に何時までも刻まれ何時か向き合わなければならない。人生には振返りを以て過去の不安と対峙し克服する力が必要。

3スジ4ヌケ3ドウサ4テイジ3コノミ

タイトルとURLをコピーしました