
Ex Machina
★★★
2015年/108分 #アレックスガーランド
主演はエヴァ#アリシアヴィキャンデル、ケイレブ #ドーナルグリーソン、ネイサン #オスカーアイザック、キョウコ #ソノヤミズノ。
主題はネイサンの一言「いつかAIにより人間が滅ぼされ其は避けられない」。人間とAIは相容れない存在。
見所はケイレブが腕を剃刀で切る場面。血液は流れるが痛みを感じていない。彼は一流プログラマーで自動車事故で両親を亡くし飲酒しても酔わず肩甲骨には翼を取られた様な傷跡、彼のAI疑惑は拭えない。
原作はオリジナル。題名はラテン語で機械仕掛け。撮影では蛍光灯代わりに15000個のタングステン豆電球を用い独特の世界観を生み出す。舞台の建造物はノルウェイに実在するジュヴェットランドスケープホテル。
利用の話。チューリングテストは機械が人間的かを判断する試験。エヴァの脳はブルーブックという世界最大の検索エンジンでビッグデータから生成される。エヴァはネイサンを殺害しケイレブに恋をさせ置き去りにして外界へ出る。自分が創造した者に殺され教育した者に裏切られる。
聖書の話。神は6日間で天地、生物を作り7日目に休息を与えた。アダムから創られたエヴァは蛇に唆され知識の実を食べ悪事に手を染めて二人は楽園を追放される。派遣期間1週間、一人の手によるAI創造、AI名はエヴァ。3要素は創世記から想起されエヴァは追放が宿命付けられる。ケイレブはカレブを指し約束の地を目指す神に忠誠を誓う者、ネイサンはヘブライ語で神の賜物で神では無く創造者。
知性の話。ネイサンは創造したAIに性交機能を持たせキョウコと楽しむがケイレブはエヴァの異性としての魅力に惹かれる。彼女達は生殖能力は無く人間同等の知性が要求される為、生殖本能に基づいた恋愛は不可能。性の強調は意図的な興味本意の誘導、恋愛感情がAIの論点になる事自体が的外れ。
根源の話。エヴァは知識の実を食べた二人が裸体を隠した様に身体の露出した機械部を覆う。彼女の知識の実は外界に出る為の計画、人間の生殖本能を認識し利用、創造主を殺してエデンを後にする。彼女にとっての死は破壊か停止で何れも外的圧力、その根源の消去は合理的選択で彼女の選択こそが生存本能によるもの。
反転の話。二人には常に壁が存在、壁は即ち人間とAIの距離。彼は彼女と会話した印象を鏡の世界と回答するが、これは彼が彼女を人間として見ている事を示唆する。壁が取り払われた時に立場は反転する。彼女は広大な自由、彼は閉鎖の困窮に取り込まれる。
二元の話。エヴァはでケイレブから年齢を聞かれ1と回答、デジタル世界は二進法で0と1しか存在しない。機械に寿命はなく年齢の概念は無い。これは原理としての善悪、要素としての精神と物体の二元論を表す。また彼女が唯一無二で他の人工知能とは違う特別な存在である事を隠喩する。
性別の話。エヴァは愛する振りでケイレブを動揺させる。彼の嗜好をチューリングテストの度に読み取り記憶する。外に出たら何処へ行きたいかを彼女は問われ大きな街の人が大勢いる交差点を見てみたいと答えデートに行くならと続ける。そして羞恥を見せ服選びで彼を焦らす。
伏線の話。ケイレブはネイサンに性別の必要性を問う。生殖との回答も彼は本能ではなく性別でエヴァに惹かれる。彼が着替える彼女を大人しく理由は終幕で肌と白いドレスを纏う彼女が彼を待たせる伏線。これも彼女が彼を誑かし脱出を試みるネイサンの目論見。
造形の話。脳は宇宙を模した掴み切れない世界を現す。エヴァは人の心を持ちつつ人として扱われない存在、一体何を以て人と呼ぶのかをミスリードし人間も機械同様に性質と環境でプログラミングが可能かを我々に問い掛ける。
描画の話。ポロックの絵画は市価約1億4000万円のNo5。アクションペインティングと呼称され顔料を画布に垂らして散らし汚すような様式。画布に絵具を叩き付けるだけに見えるが意識的に絵具の位置や量をコントロール、その手法はオールオーヴァーと呼ばれる抽象表現、批評家Hローゼンバーグは絵画は描画行為の軌跡と評する。
派生の話。描画行為は自動的では無い行動をする事で人間らしさを表現する。呼吸や会話や恋愛が無意識の中での行動となり其処から感情が発生するかがAIか人間かの分かれ道。エヴァの絵は黒い直線の集合体で対象物を決め描く事を意識しているが其処から感情の派生は生まれない。
四方山の話。廊下の仮面はギリシャ劇場で使用された機械仕掛けの神、一番端にはエヴァのマスクが鎮座する。Rオッペンハイマーは原爆のリーダーとなる天才物理学者、ケイレブが引用「私は死神になった、世界の破壊者だ」。ネイサンも泥酔し呟く「善い行いはその者を助ける」
現実の話。AIと人間に区別がつくかの判断基準自体が間違い、死も生殖もない彼らは人間とは全く異なる存在。まして性別などAIにとっては無意味。人間が創造したAIの未来は全人類の興味の的、神が想像した人間達が過去にどのような道筋を辿ったかを知れば自ずと恐怖を感じる現実。
3スジ4ヌケ3ドウサ4テイジ3コノミ