ノクターナル・アニマルズ

Nocturnal Animals

★★★
製作2016年/116分 #トムフォード

主演はスーザンが#エイミーアダムス、エドワードが#ジェイクギレンホール、ハットンが#アーミーハマー、アンが#ローラリニー、ボビーが#マイケルシャノン、レイが#アーロンテイラー

主題はエドワードのスーザンへの一言「此が君が僕にした事、僕を殺し僕を壊し僕の家族を殺し僕の事をズタズタにした、でも20年かかり僕は打ち勝った、自分が信じた道を行き小説にした」。彼は彼女に君とは終わったと告げるが人生には悲しい時が多々あり其処から我々は成長し進歩することが出来る。乗越えた彼女の不幸な人生は終わる。小説を読む事での痛みは成長をもたらす。

見所はトニーが妻子の死体を発見する場面。この時、スーザンは娘に電話を懸けるが此は彼女の仮想と現実が融合した瞬間を隠喩する。

原作は#オースティンライト の「#ミステリ原稿」。元夫エドワード作「夜の獣たち」の内容はトニーが妻子とのドライブ途中で若者達に襲撃を受け妻子は殺害される。彼は刑事ボビーと共に犯人レイを追い詰めるが、レイは無知を装い続け仲間を射殺する。最後に二人は一騎打ちとなりトニーはレイを射殺、その後に銃の暴発で息を引き取る。

肥満の話。冒頭から全裸の肥満女性達が舞い踊り観客は驚愕の光景を目にする。此はルシアンフロイドの絵画からの引用で彼はフロイトの孫、本作が精神分析的な一面を持ち獣がエドワードの精神を表わす事を仄かに匂わす効果を果たす。

主観の話。小説の映像はスーザンの記憶による主観的な物でトニーを元夫に配役したのは読者である彼女の想像。エドワードの車はトニーが乗るベンツで彼女は離婚後も彼が同じ車を愛用する前提で物語を進めている。彼女は彼の小説に入り込み自身の贖罪と小説の出来事を重ねるが、その度に更なる不眠や夫の不貞に悩まされる。彼女はメールで彼にまだ独身と質問、彼に対して常に優越感を抱いている。彼女はギャラリーオーナーで富裕層、彼は教師で庶民層、其処に憐憫の情が現れるのは当然の話。

翻弄の話。小説は序文の通りスーザンに捧げられ夜の獣は慢性的不眠症患者の彼女であり小説ではトニーを指す。彼は自分と家族の危機を前に若者相手に有効手段を講じないまま、話術に翻弄され何処に行くか解らずに疲弊し他者の言う通りに進む。エドワードの手紙は主張する「君といた時の作品とは違う」

象徴の話。スーザンは人生を失敗した母に反発すれど夢を諦め、夫の不貞も見ぬ振りをし、他者の罵倒する母同様の女性に成り果てる。彼女は夢を諦め夫の財力頼みの富裕層に甘んじて生きている。小説でトニーはレイを撃ち殺し復讐するが此はエドワードから彼女への命を賭しても自分を低く見積もらず母や夫の呪縛から解き放てとの進言となる。

解釈の話。小説はエドワードが自身について書いた物だが映像を浮かべるのはスーザンとなる二重構造。彼女が彼に最後に会ったのは20年前で中絶手術直後の為、彼の想像する娘も妻ローラもスーザンに擬似している。ボビーは典型的な正義の味方で小説では見つけ捕まえ復讐を果たせと囁くが、実際にはエドワードに小説を書き彼女に送り自分の勝利を見せてやれという内なる声を発する。

契機の話。現代は何でも簡単に捨てる時代で全てが消耗品。人間は仲間すらも捨てる文化を持つ種族、本作は誰かを大切に思い愛するなら投げ出したり手放してはいけない事を示す。スーザンは外見では自分の理想を手にするが内面は死んでいる。彼女はこの小説が契機となり真実に気付き始める。

牽引の話。本作はスーザン、回想、小説の3つの世界から構成され各々で彩度と明度と色調を変える。スーザン世界は薄く冷たい。回想世界は濃い温かい。小説世界は明るく粗い。各々の世界は淀みなく繋ぎ合わされ一体感を以て物語全体を妖しく美しく牽引する。

芸術の話。エドワードは小説という芸術を通してスーザンと会話を図ろうとする。アートディーラーの彼女は常に芸術に囲まれている為、彼女自身の想像も必然的に芸術的。映画の中で出てくる芸術作品が象徴的、ダミアンハーストの矢が刺さる作品等、スーザンの時々の気持ちが作品に反映されている。

成長の話。エドワードがスーザンに語る「此が君が僕にした事、僕を殺し僕を壊し僕の家族を殺し僕の事をズタズタにした、でも20年かかり僕は打ち勝った、自分が信じた道を行き小説にした」。そして君とは終わったと続ける。人生には悲しい時が多々あるが其処から人は成長し進歩を見せる。

4スジ3ヌケ4ドウサ3テイジ3コノミ

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