
Black Swan
★★★★
原題#BlackSwan
製作2010年/108分 #ダーレンアロノフスキー
主演はニナ#ナタリーポートマン、トマ#ヴァンサンカッセル、リリー#ミラクニス、エリカ#バーバラハーシー、ベス#ウィノナライダー。
主題はプリマの使命を全うし呟くニナの一言「完璧だわ」。この言葉は錯乱による恐怖を表すが恐怖はまだ続く。トマはニナにベス称賛時の呼名同様に「マイリトルプリンセス」と囁く。満場の拍手と歓声は幸福の瞬間も全ては夢幻泡影。
見所は妄想。二人はパーティ後、ニナの自宅に帰り性交渉をする。リリーには翌日、宿泊していない事実を告げられ私とのセックスを妄想したか質問される。
原作はオリジナル。ABTダンサー#サラレーン はポートマンのダンスダブル、ダンスシーンの大部分が吹替も彼女はエキストラでクレジットされない。監督等関係者は難しい場面以外は自分で踊ったとしてポートマンを擁護する。ニナの練習着デザインは独在住の日本人ダンサー兼デザイナー#竹島由美子。
姉妹の話。本作は元々「#レスラー」と同企画で姉妹編。ダーレンは2本を比較し「ある者はレスリングは最低、バレエを最高の芸術と呼び、私にとって驚くべき事は此等のパフォーマーが如何に似通っているか、何れもパフォーマーの身体を信じられない程に使い何かを表現している」と語った。
理論の話。本作はブラックスワン理論の影響を受ける。それは予期せぬ事態が生じた場合に衝撃が発生する現象で主に金融危機や自然災害で用いられる。1697年豪州の黒鳥発見以来、汎用され#ナシムニコラスタレブ は著書「ブラックスワン/不確実性とリスクの本質」で現象発生後の偶然性欠落や事前理解の勘違い発生を指摘した。
影響の話。監督はポランスキー「#反撥」「#テナント/恐怖を借りた男」に影響を受けると発言も「#パーフェクトブルー」との類似性を指摘され否定した。彼は「#レクイエムフォードリーム」でリメイク権を購入しており#今敏 死後の発売書籍「今敏アニメ全仕事」には哀悼コメントを寄せ関与を認める。
心理の話。ニナはトマとリリーの性交渉を目撃する。その時リリーは笑いトマは黒い怪物に変身、彼女は役を取られる恐怖に怯え、それが妄想となり現実のものとなる。これはニナが主役として抜擢された理由がトマの誘惑にあると思い込んだ彼女の心理状態に起因する。
表裏の話。ニナがトイレに向かうと鏡には口紅で「アバズレ」、しかしこれも彼女自筆のメッセージ、ディスコ場面の周囲の他人は一瞬、全員がニナとなる様に全編が彼女の妄想物語。終幕で彼女は公演後、自分が殺した筈のリリーの訪問や浴室の死体消失に驚愕するが真相は自傷行為。配役喪失の恐怖が彼女に幻覚を見せる。リリーとの初対面も鏡の前、鏡の中のドッペルゲンガーが彼女自身の乗っ取りを図る。
終焉の話。ニナは大人になってもパステルカラーのファンシーな部屋で暮らす無垢なる女性。母娘念願のプリマ希望も白鳥は演じられても妖艶な黒鳥は演じられず運命の岐路に立たされている。そして願望が幻影に変わる。最後に迎えるリリーの死が彼女の子供時代の終焉を意味する。
願望の話。ニナはトマに色気不足を指摘、自慰も指示されキスも要求される。彼女は彼を受け入れられる事は出来ないが、性欲は止められず帰宅後リリー相手に指示通り自慰をするが、その傍らには母が存在する。しかし、それら全ては彼女の妄想、自分で感じ希望している事が現実のものとして現れる。
母娘の話。ニナは心配する母には悪態をつき、降板で失意のベスには盗難を働き、舞台で彼女を落とすプルミエを叱責する。彼女は周囲に恐怖を与えるだけで自らを省みる事はない。母は自分の夢を諦めた事を度々口にする。彼女はニナの為を口実に彼女に責任を押し付け過保護を強めていく。そして私怨を持ちつつ愛以上に自我を強要し束縛を図る。それがニナの日常生活に浸透し全てを覆い尽くす。
錯乱の話。ニナは精神錯乱を来たして次第に幻覚が加速を始める。鏡の中の自分が違う動きをする、鏡周辺の写真や絵画が一斉に動き出す、二重鏡の自分が背中を掻きむしる、お風呂の上でベスが見ている、足が不自然な方向に折れ曲がる、全ては彼女の妄想、悪いのは自分という自己責任が彼女自身を破滅へと追い詰めていく。
恐怖の話。ベスはニナの抜擢で降板し自ら事故で入院する。ニナは彼女の所有物を盗難した事を後悔し返品するべく病院に向かうがベスは許さない。ナイフで自分の顔を傷付け私は「完璧じゃない」と絶叫。そしてニナはラストステージで全てを超越し「完璧だわ」と漏らす。二つの台詞は対となるが全てはニナの希望的願望でベスを完璧に見下している。
3スジ4ヌケ4ドウサ4テイジ3コノミ