
The Squid and the Whale
★★★
原題は#TheSquidandtheWhale
製作は2005年/81分 #ノアバームバック
主演はバーナード#ジェフダニエルズ、ジョーン#ローラリニー、ウォルト#ジェシーアイゼンバーグ、フランク#オーウェンクライン、アイヴァン#ウィリアムボールドウィン、リリー#アンナパキン、ソフィー#ハーレイフェイファー。
主題はバーナードが救急車でジョーンに呟く「最低な女」。これは#ジャンリュックゴダール 「#勝手にしやがれ」で#ジャンポールベルモンド が死に際に残した台詞の引用、対する#ジーンセバーグ は自分の唇に触れ呟く「最低って何」。ジョーンは鏡の前で同じ仕草を見せるが、これは彼女が最低な女とは何かを問う暗示、子供視点では両親共に最低な存在。
見所は色目の話。バーナードはウォルトに自分の経験を踏まえ恋人との付き合い方を伝授、しかし彼は息子が同居人リリーに惹かれている事を知らない。彼女は彼の教え子で住み処を追われ間借りさせたが、彼は彼女に性的強要を図る。彼女は性的に解放された全ての男に色目を使う魔性の女。
原作はオリジナル。次男フランクはケビンクライン とフィビーケイツ の息子。フィビーとノアの先妻ジェニファーが友人関係であった事から配役される。
命名の話。題名は深海で決闘するマッコウクジラと大王イカに由来する。これは離婚争議するバークマン家の父と母を暗喩する。ウォルトは6歳の頃、自然史博物館の闘うイカとクジラの展示を怖くて視られなかった。同様に子供にとって両親の争いや離婚は怖くて視られないものである。
視点の話。離婚の契機はジョーンの浮気。バーナードは彼女の浮気を責めるが実は理由は問題ではない。本作は身勝手な大人の視点ではなく抑圧される子供の視点で観るべき作品。父はウォルトのデートに同行、R指定「#ブルーベルベット」を観せた上にランチを彼女に奢らせる。次男フランクが病気と告げれば薬を自分で買いに行かせた挙げ句に卓球を強要する恥知らずな男。
記憶の話。ウォルトは少年の頃に自然史博物館のイカとクジラの決闘模型を正視出来ず恐怖に戦いた。しかし母は帰宅後、その日を振り返って彼に模型の事を楽しそうに話してくれた事を思い出す。その記憶は今でも彼にとって母の愛を感じた大切な宝物となっている。
自覚の話。父は他人を批評する事は出来るが自分を分かっていない典型的な人間。また人の価値は知識が決めると勝手に思い込み自分がそういう人間と自覚もしていない。ウォルトは両親の異性交遊を度々耳にして嫌悪感を覚えている。それがトラウマとなり彼女と性交出来ない悩みを抱える。
嫉妬の話。ノアは作家の父ジョナサンと映画評論家の母ジョージアから育てられるが80年代に入り両親が離婚、週3日の交代制で父母を行き来する生活を強いられる。父は作家と同時に文芸評論家も務めるが何れも過去の人、母はビレッジボイス に執筆する売れっ子評論家、収入は明らかな格差を生み出し遂に父は母に嫉妬を見せ始める。
共通の話。ノアと#スティーブンスピルバーグ には共通点がある。二人は幼少時代に#フランソワトリュフォー 「#野生の少年」を観て誰にも愛されない少年に高い共感を覚える。実は彼等も少年時代に両親が憎しみ合う家庭で育った野生の少年。そして彼等の悲しみを救ったのが映画であった。
恐怖の話。本作を#スティーブンキング は最高の恐怖映画と評する。彼は74年「キャリー」でデビューするまで不遇の時代が続き、その頃の記憶を基に「シャインニング」を執筆し大成功を納める。彼は収入が妻より少ない夫は最大の悲劇で恐怖を創り本作をシャイニングのコメディ版と語った。モダンホラーの開拓者にして第一人者がコメディをホラーと語るのは不思議な話。
疑問の話。ゴダールは従来は禁じ手とされたジャンプカットを「勝手にしやがれ」で使用し#ヌーベルバーグ を確固とした地位に押上げる。これは独特のスピード感で従来の枠組みに縛られない自由度を表現するものでノアも終幕で使用。彼はその意味を聞かれ答えた「人生というのはそういうもの」。良き映画と良き人生は数多くの謎と疑問が残される。
模型の話。終幕でウォルトは自然史博物館へ走って行き、自身の原体験となったイカとクジラの模型の前に立つ。過去を目の前にして絶望の未来と向き合う事を覚悟し果敢に挑む事を誓う。
3スジ3ヌケ3ドウサ5テイジ3コノミ