
Down by Law
★★★
原題は#DownbyLaw
製作は1986年/107分 #ジムジャームッシュ
主演はザック#トムウェイツ、ジャック#ジョンルーリー、ロベルト#ロベルトベニーニ、ニコレッタ#ニコレッタブラスキ、ロレッタ#エレンバーキン。
主題は終幕でジャックとザックが西と東の別れ道に立ちジャックが言う言い放つ一言「お前が選べ俺は反対に行く」。これは題名となるダウンバイローを象徴する。ジョンは前作「#ストレンジャーザンパラダイス」に続いての存在感、ロベルトの出演は本作に大きな喜劇性をもたらす。
見所は3人の合唱。アイスクリーム、ユースクリーム、ウイオールスクリームの大合唱が彼等を仲間にする。これは20年代スタンダードナンバーからの引用、また他の二人が冤罪を愚痴る場面でロベルトはビリヤード球を投げて殺人したと語り二人を唖然とさせるがこれらは全て彼のアドリブ。
原作はオリジナル。本作はスタジオシステムに属さない自主映画、シンガーソングライターのトム初主演映画で彼は本作でも楽曲ジョッキーフルオブバーボンとタンゴを提供する。ジムはこの後でミュージカル「#フランクスワイルドイヤーズ」の映画化を計画するが経済的理由で実現ならず。
迅速の話。ジムはトムを作曲家以上の存在と評しアイデアは彼の歌からインスピレーションを受けたと語る。彼は制作に辺り主演3名の友人を思い浮かべ、トムの音楽からニューオーリンズやルイジアナの湿地や街頭、廃墟を想いイメージを膨らます。脚本は2週で執筆、6週でオールロケを敢行し作品を完成する。悪夢とお伽噺の交錯した世界は浮世感を加速させる。
題名の話。題目はシステムに縛られずに自由に生きる連中の意。元来20年代に北部移住の黒人達が街に馴染んだ際に「自分でやっていける」と言い聞かせたストリートトークに由来。70年代後半迄は黒人や塀の中の言葉とされたが後に「アウトサイダーだから信用出来る」の意に変化しミュージシャン達は「気が合い頼りになる仲間」のアウトロースラングで用いる。
鼻歌の話。ジムの白黒への拘りは配給元よりカラーなら資金提供すると言われた反骨から生まれたが、彼はその美学に確信性を見出している。終幕で使用される2人のダンス曲はソウルクイーンの#アーマトーマス 62年「#イッツレインニング」。トムの鼻歌は使用料問題で本人が即興で作る。
無実の話。ザックは元ラジオDJ。連日、仕事もせず漫然と過ごす。 ある夜、同棲中の恋人ロレッタと大喧嘩しアパートから追放、更にマフィアからジャガー移動で報酬$1000の儲け話を持ちかけられるが、車のトランクには男性死体。何もしなかった彼が殺人の罪で逮捕される皮肉、勿論、冤罪。
買春の話。ジャックは客引き。売春婦から金のだらしなさを窘められつつ緩慢として怠惰に過ごす。ある日、チンピラのギグから19歳美女の紹介話が持ち掛けられ、彼女が待つ部屋へと向かうが入室の途端に刑事が乱入、恋人と弁解するが相手は少女。客引きをしていた彼が買春の罪で逮捕される皮肉、こちらも勿論、冤罪。
喧嘩の話。ザックは監獄で悶々とする。そんな中にジャックが収監。しかし2人は馬が合わず3日間、口を開かないが職業話が沈黙を破る。彼が元DJと知りジャックはトークをせがみ2人の距離は縮まるが、何故か縮まった分だけ喧嘩は激しさを増す。ここに人間の可笑しさと悲しさが共存する。
変化の話。険悪な2人の間にロベルトが収監。彼は片言の英語でメモを見ながら意味不明な言葉を話す為、2人は無視する。煙草を貰ってもライターは無く、外を見たくても窓は無し。しかし彼はメゲずにチョークで壁に窓を描く。二人は彼の善き人柄に影響され会話は次第に増えていく。彼等の罪だが2人は無実でロベルトは殺人、外見と中身の相違も皮肉、善悪は曖昧なもの。
裏切の話。ロベルトは抜穴を発見、二人は取り合わないが運動の際に3秒で脱獄する。3人は沼に辿り着くが彼は泳げず置き去り、覚悟を決めれば沼には鰐が生息し結局3人で森を抜ける。翌朝ボートで沼地を進むが似た景色で同じ所の堂々巡り、やがて船底に穴が開き歩行を余儀なくされる。幾つもの裏切りの可笑しさで物語は進む。
団欒の話。ロベルトは夜に突然姿を消す。そして二人は殴合い。そこへ兎を捕まえたロベルトが帰還し仲裁するが2人は逃亡、それでも彼は兎を調理し2人の帰りを待つ。帰った2人に何故かタイヤ味のする肉を食べさせ再び仲間で団欒の時を過ごす。
希望の話。3人が脱獄し森を彷徨う場面は混迷の時代を示唆、偶然あるカフェへの避難は女主人の生い立ちも含め運命を象徴する。ロベルトは女主人ニコレッタと意気投合し生涯の伴侶と決めるが、二人は依然噛み合わず西と東の分かれ道に別離の空気感が漂う。ロベルトのメモ「悲しくて美しい世界」がそこにある。各人の旅立ちは清々しく未来は再会する希望に満ちている。
3スジ3ヌケ3ドウサ3テイジ3コノミ