ジェミニマン

★★
2019年/117分 #アンリー

主演はヘンリー&Jr#ウィルスミス、ダニー#メアリーエリザベスウィンステッド、クレイ#クライヴオーウェン

主題はJrが呟く「道が無いよ」。彼はヘンリーからクレイの元を離れて好きな事をすれば良いと進言されるが彼は伝統の中でしか道は無く抜け出す方法を与えられていない。

見所はバイクチェイスは圧巻。狭い路地を中心に追う側と追われる側の視点を交互に緩急のある映像、120fpsによる美しさと加速感を体感出来るのは新時代の到来を告げる。

原作はオリジナル。ディズニー製作1997年公開で話は進んでいたが技術開発の遅れにより進展は見られなかった。製作者の意図した120fpsの圧倒的な映像体験は日本に3館のドルビーシネマが推奨館。

技術の話。監督が映像の未来を示した実験作であり意欲作となる一本。本作は4K/3D/120fpsで撮影した為にHFRハイフレームレイト対応の環境を持つ劇場が必要となる。120fpsは1秒間に120コマ、通常は24fpsの為、単純に5倍強の映像。その為、観賞環境が最も重要、環境次第ではこれだけでも見る価値のある作品となる。

適正の話。24fpsは現実性や動作性や経済性を適正化し調整した結果で辿り着いたフレームレートで現実生活との格差知覚の最適バランスを追求したもの。30fpsでは軽薄な印象を与える映像になると言われる為、絶妙な映画らしさを実現する。フレームレートを上げても現実には近づかず超越により重厚感が損なわれる。

体験の話。ヘンリーの動作も去る事ながらJrはクローン感を出す為に更なる滑らかさを以て仕上げられており現実離れした違和感を生み出している。また硝子や火炎に水質の表現は特質ものでその質感には舌を巻く。そこに軽微さは微塵も感じられず、我々は実際に限りなく近い体験をする。

顕在の話。3Dではガラスの破片を意識的に飛び散らせる事は度々有ったが本作では過去とは比較にならない精度を見せつける。硝子粒子の一粒迄もが美しく質量を感じさせる為に高次元の臨場感が実現する。また水中描写も必見、水中での裸眼開眼は困難な為に見えすぎる水中映像は不自然であったがそれを顕在化し遂に錯覚を引き起こす。

同類の話。JDヴァンス「ヒルビリーエレジー」で作者は白人労働者階級で田舎者を指すヒルビリーを隣人で友達で家族と語った。貧困は伝統となり脱出には教養や技術が必要となり結果として貧困サイクルから抜け出せないがその境遇は国家責任。Jrは父が凄腕殺し屋のクローン、彼は一つの道しか残されていない。

解放の話。Jrはヴァリスに銃口を向けるがヘンリーが発砲する。彼は自分の孤独で不安な血の宿命をJrに背負わせたくない。その為に伝統を解放、道を示して救済に尽力する。親の決定が子の限界を決める状況は否定出来ない。親は解決方法を子に教え手助けする存在、それを怠れば悲劇が生まれる。ヘンリーはその事を理解しJrに抜け出す道を示す。

模索の話。JrはフルCGで若きウィル・スミスを再現し創造された。ヘンリーは劇中で51歳の年齢を強調したが此はWスミス自身の年齢とも重なる。此処には成功した者も模倣しても勝利は生まれない事が示される。現在、彼の息子ジェイデンは俳優の傍らブランドMSFTSrepを立ち上げ、13年には顧客が自分でロゴを作成し購入可能なポップアップストアを開店させている。

宣伝の話。本作は80億円の大赤字を生み出す残念な結果に終わった。その理由は高額技術の乱用によるもので革新的取組を実施した映像技術の費用だけでも40億円超。宣伝はスミス対スミスとして往年のJウーを想起させる内容も物語自体は精彩を欠く内容となった。

冒涜の話。ヘンリーとJrへの最後の刺客はJrより若年のクローン。彼は感覚や感情を奪い取られた最強の刺客ながらも最早人間では無い。ヘンリーの軍隊でも作る気かの話は伊達では無く、人の傲慢さに警鐘を鳴らす恐怖の結末となる。クレイがクローン制作の理由は戦争でPTSDや負傷の兵士を作らぬ為の技術革新、彼には彼なりの論理があれど制限なき進化は神への冒涜に繋がる。

2スジ2ヌケ4ドウサ2テイジ1コノミ

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