グッドナイト・マミー

Goodnight Mommy

★★★
2014年/99分 #ベロニカフランツ #セベリンフィアラ

主題はママという大人が感情を爆発させる発言「遊びは止めにする」。しかし子供には極めて真剣な話。そして真実が露となる「服も一つしか買わないし朝食も一人分しか作らない」。見所は三部構成による展開。一部は疑心、二部は戦慄、三部は夢幻。9歳は大人でも子供でもない微妙な時期、不安定な状況が生み出す狂気の世界。原本はオリジナル脚本。

不在の話。ルーカスの不在は随所に見られる。家族3人によるゲームでママは子供達からのヒント「子供が2人いる」で誰の事か全く理解出来ない。ママとの初対面時に彼の服だけ汚れておらず、入浴後に彼のジュースは出ない。冷凍ピザのデリバリーやピザを食べる時、ママが猫を捜索する時もその姿を消している。エリアスは彼に言われた事を繰り返すだけでエリアスは彼の名前を呼ぶがその逆は無くママも含め全ての人と直接対話はせずにエリアスへの耳打ちで意思伝達する。

虚構の話。エリアスの夢は母が虫で形成される虚構の暗喩。彼等は眠る母の口内に虫を入れる。その後、腹を切り割くと虫が溢れ出る。虫はエリアスが洗面所でフロスの最中に天井で発見、交代の時を知らせるベルが鳴りルーカスを呼び、彼が洗面所に立つ時に虫が降り落ちる。虫はエリアスでは落ちないがルーカスには落ちる。これはルーカス自体が虚構の存在である事を暗示する。

逆転の話。ママは森林で包帯も洋服も脱ぎ捨て、彼等は玉蜀黍畑で密談を重ねる。森林や玉蜀黍畑は家族全員の魂が避難する場所となっている。家族安息の場所となるべき瀟洒な家屋は彼等の手で無惨にも燃やし尽くされる。現実と虚構の逆転現象が生まれる。

疑心の話。ママの顔は包帯で覆われており、その表情は全く解らない。以前の柔和な性格は消え険悪さだけが立ち込める。ママが電話で誰かと話している「これ以上フリを続けられない」。アルバムを覗けば、まるで記憶を消すかの様に写真が何枚も抜け落ちている。一枚の写真に目が止まるが、それはママと瓜二つの女性が並んだ写真。彼等はママの黒子を確かめるべく動き出す。疑心暗鬼が加速を始める。

戦慄の話。赤十字ボランティアが自宅を訪問するがママの叫びは届かない。愛する息子は妄執に取り憑かれ、ママをベッドに拘束し拷問にかける。虫眼鏡の集光で頰を焼き、唇を接着剤で固定した上で無理矢理剥離する。彼等はあどけない表情でママに質問「お漏らししちゃったの」。戦戦慄慄が加速を始める。

夢幻の話。夢幻泡影が加速を始める。彼等は精神的に深い繋がりを持ち、高い共感度を有している。離れたくとも離れられない。彼等の手でママは業火の炎に包まれる。その後、家族3人が叢の中に集う。皆、笑顔で再会を喜んでいる。夢幻と現実の境界線が崩れ、怖気と哀気が混濁を始める美しくも儚い終焉。

3スジ4ヌケ3ドウサ3テイジ4コノミ

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