キングダム

Kingdom

★★
2019年/134分 #佐藤信介

主題は漂の遺言「俺を天下に連れてってくれ」。見所は再現性。本作は配役と収入が評価基準となる新機軸の一本。原作は原泰久。累計四千万部超を記録したYジャンプ連載漫画の実写版で本作は原作単行本第5巻迄の抜粋版。

偏在の話。紀元前245年の秦で戦災孤児となった信と漂、天下の大将軍を夢見て剣術の腕を磨く。内田版「宮本武蔵」を想起させる冒頭だが人物の描き込みは薄く比較にならない。二人は奴隷身分ながら何故か練習をする時間的余裕を持ち、主人は都合良く厳しく都合良く優しい。食事による栄養摂取や知力研磨の術は全く描かれず無視された状態で強引に話は進む。また出世法も士官や武勲ではなく運頼み。若者の未来が身体鍛練と運気頼みでは賛同しかねる。映画の方程式を無視したご都合主義は否めない。

共有の話。漂は瀕死の中で信の元に帰って来て地図を渡す。地図の行先は秦の国王嬴政の潜伏先、漂は嬴政の弟成蟜の反乱で国王の影武者となっていたが手負いとなり志半ばで絶命する。信は彼の意志を継ぎ嬴政の王座奪還への協力を決意し嬴政と行動を共にする中で「中華統一の唯一王」が彼の最終目標と知り、彼の夢に自分と漂の夢を重ねる。更には二人に加え楊端和や王騎も巻き込み個が全となり、全が国を成す。この目標が物語全体を牽引していく。

予測の話。本作の作家性自体を完全に排除した割り切りはある意味で画期的。また役者個人の演技にも制限を設けて漫画の世界観を再現した点は特筆に値する。徐々に拡がりを見せる他媒体からの映像化の未来は、本形式に当たる再現性とキャラクター利用による作家性の二種類が主軸となる。近年、観客を喜ばせる方向には明らかな変化が生まれている。

商業の話。映画のビジネス化は進む。プロデューサーからの依頼は予算内での映像化。それをクリアして利益を積み上げた者だけに次の機会が与えられる。即ち監督に期待される事は脚本家からプロデューサー業へと移行、監督は関係者全員の希望を聞き上手に管理するマネージメント業務にシフトしてきている。参加したスタッフは700人超、エキストラは1万人超、馬体は100頭超で中国本土ロケを敢行。日本人による日本人だけの中国歴史絵巻、もはや邦画にも国境は無い。

1スジ1ヌケ3ドウサ1テイジ2コノミ

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