
Lawrence of Arabia
★★★★★
1962年/227分 #デヴィッドリーン
主題は「彼は何者か」。英国将校トマスエドワードロレンスのオスマン帝国からアラブ独立迄の道程を描いた物語。彼は遊牧民ベドウィンから数多くの称号「ダマスカスの解放者」「アカバの英雄」等を与えられ信頼と尊敬の念を込めオレンスと呼ばれた。目立つのを嫌いつつも有名になる事を望んだ彼の死因はバイク事故ではなく陰謀説が今も囁かれている。
疲労の話。原作は自著「知恵の七柱」。彼は詩人で哲学者で行動する者。行軍は王子と首長の会談に始まり、海ではなく陸からの砂漠横断によるアカバ攻略、ゲリラ戦での鉄道爆破、タファス村でのトルコ軍大虐殺を経て、ダマスカスで終焉した。アカバでの海に向けられた大砲場面が印象的である。彼は戦争の空虚さを「我々は自らの行為によって風に飛び散る枯葉の様に道徳や意思や責任を無くしてしまった」と赤裸々に語った。
話題の話。劇中の五場面は見所で歴史的名場面。吹き消すマッチが太陽に変わる、地平線の蜃気楼が人影となる、夕日の海岸を悠々と遊覧歩行する、白昼の砂海を地平線沿いに駱駝が疾走する、地獄の太陽が照射熱を徐々に増していく。蜃気楼場面は長回し1カットで撮影されたが勇気が無くてカットしたと後日監督は語った。ロレンスは砂漠の良さを「クリーン」と回答、砂漠は環境だけでなく人間も清廉潔白に変え文明社会とは一線を画する事を隠喩した。衣装は全てオリジナルで撮影は2年3ヶ月、50℃越えの猛暑と砂塵で過酷を極めた。
脚色の話。ロレンスは夜間行軍中に失踪した仲間を皆が無謀と止める中で引き返して連れ戻す。その勇敢さからアラブ人の人望を集め仲間として受け入れられたが、実際は危険な救助を仲間から非難され失笑された。監督は敢えて意思の力を示す挿話として採用、その後で助けた男を自らが殺める事で神格化した人物像を創出した。
狂気の話。ロレンスは優しさと脆弱さが共存する点が魅力。部下2人の死に対して「死体はとても痛々しく小さな塊になっていた。体を伸ばしてあげたら楽になれるだろう」と語り、デラアで捕虜になった時は「私の肉体はそれまでの恐怖と次に襲ってくる恐怖でわなないた」と語った。やがてベドウィンへの愛情が憎悪に変貌「片時も私の念頭を離れる事のなかった大きな詐欺感に嫌気がさした」と吐露する。それでも将軍は帰還を許さず戦地に返送、彼は「私にはもう逃げる道は無かった」と語った。彼の護衛は無法者と殺人者集団90名、敵の捕虜を作らない代わりに連日殺戮を続けた。彼の「皆殺しだ」発言が狂気を象徴する。
性癖の話。アラブ人でもない彼がアラブ独立を目指す理由は不明であったが後日「一人のアラブ人が好きだったから」と回答した。彼のホモセクシュアルは通説で、著書の冒頭でS.A宛に愛してるで始まる詩を寄稿、S.Aはダフウムの本名と一致するが正体は今も謎。トルコの司令官が彼の体を撫で回し舌舐めずりする拷問場面やアリとの切れない不思議な関係も性癖を暗喩する。
5スジ5ヌケ5ドウサ5テイジ5コノミ