パディントン

Paddington

★★
2014年/95分 #ポールキング

主題はパディントンの一言「人と違ってても大丈夫 僕はクマだから」。見所は近衛兵。パディントン家出して雨に打たれお腹を空かす、英国は近衛兵も紳士的なお国柄、近衛兵は彼に無表情ながらも優しくお弁当を差し出す。愛念に満ちた心暖まる場面。原作はマイケルボンド「くまのパディントン」。1958年に彼がXmasイヴに奥様へのプレゼントで購入したぬいぐるみから発想、BBCカメラマンとして働きながら執筆、世界40カ国語以上で出版され総売上部数3500万部以上の大ヒット作。ベンウィショーが吹替を担当した。

性格の話。ブラウン家は夫ヘンリー、妻メアリー、長女ジュディ、長男ジョナサン、親戚で家政婦のバード夫人の5人家族。夫や長女は見ず知らずのパディントンが家に居座る事を良しとしないが、母と長男は好奇心旺盛ですぐに打ち解ける。バード夫人は昔から夫婦や子供達を知りつくしており彼をいち早く家族に欠かせない存在と認める。

奥様の話。挿絵画家の伴侶は原作者との関係性も想起する女性像。メアリーは天然ながらも感情豊かで優しい女性、パディントンが家出した際に彼女だけが彼の身を案じて助けとなるべく奔走、家族全員との絆を生み出す。彼女は異文化への差別的姿勢は皆無で彼女無くしてパディントン無し。我々に理解者の存在意義と人生に必要な要素とは何かを問いかける。

洒落の話。パディントンは浴室使用法が解らず部屋を丸ごと水没させて歯ブラシで耳掃除等、破天荒ぶりを見せるが本来の彼は極めて紳士的、相手への配慮を怠らない礼儀正しい熊。モンティパイソンやMrビーンを排出した国の面目躍如、英国人の本質が見え隠れする。

畏敬の話。ミリセントは類い稀なる美貌と伸びやかなる四肢で麻酔銃を撃ちまくる剥製師。彼女のブラウン家侵入場面はニコール起用の理由を邪推する程の存在感。テーマ音源を使用したBGMはパロディ強目のMI、スケボーで泥棒を追う場面はBTTF、スケボーから投げ出され傘で浮遊する場面はメリーポピンズへの畏敬。

天災の話。パディントンはルーシーとパストゥーゾとペルーの地で穏やかに暮らしている。ある日、未曾有の大地震に遭い家屋を失う。実際に1942年8月24日にMw8.2の大地震が発生し作者もこの地震に遭遇している。彼はこの惨事からの復興が若者の未来創造の一助になると発想している。ペルーは日本同様の地震国である。

戦争の話。ルーシーはパディントン旅立ちに当たりお札を持たせた。これはペルーで戦争時に大勢の子供達が駅でお札を持って待つ事で引き取り手があったペルーの歴史に起因する。実際に第二次世界大戦時のロンドンでは疎開してきた数多くの子供達は首から名札を下げていた。作者はその記録から発想を広げお話を紡いだ。

一期の話。パディントンはブラウンがたまたま目にした駅名から命名される。パディントン駅はロンドン実在の駅、パディントンの銅像や専用店が並ぶ観光名所となっている。彼の大好物であるマーマレードは探検家が初めて熊達に振る舞ったご馳走。熊達の世界で40年間、引き継がれ愛される味に成長した。探検家に対する想いは後世迄も引き継がれる。

愛犬の話。パディントンはエスカレーターの乗り方が解らず勘違いしてチワワを抱っこする。しかも隣人である紳士の飼犬を勝手に抱いている。チワワはスリ追走劇の際にも再登場、大活躍を見せている。

抹殺の話。パディントンはブラウンと共に地理学者協会で探検家の情報収集を試みるが該当者なしで追い返される。止むを得ず極秘潜入して調査、そこで探検家モンゴメリークライドがペルーを来訪していた記録映像を発見する。協会が隠蔽を謀っていたのは動物剥製収集の事実。実は当時の彼も珍しい会話熊の捕獲が目的。彼は熊達への愛情からそのまま帰国し協会から除名される。結果的に彼は歴史から姿を消した。ここに抹殺の歴史がある。

復讐の話。彼は動物達が剥製にされるのを嫌悪し家族を犠牲にして迄も熊達を守ろうとする。娘ミリセントは父の行為を誇りとせずに逆恨みしてしまう。結果的に自分だけの自然史博物館を運営して協会に復讐する機会を待つだけの者に成り下がる、因みに彼女は映画オリジナル。

演奏の話。老人バンドの演奏曲はカリプソ、トリニダードトバゴで発展した音楽で植民地時代の奴隷が意思疎通を図る為の会話方法。劇中「London Is the Place for Me」はロンドン賛美の反面、植民地支配の英国を皮肉。カリプソ伝道師ロードキチナーは安住の地を求めペルーからロンドンに来たパディントンと同じ移民。

3スジ2ヌケ3ドウサ2テイジ2コノミ

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