愛しのタチアナ

Pida huivista kiinni, Tatjana

★★★★
1994年/62分 #アキカウリスマキ #ラブストーリー

コーヒーとロック依存症のヴァルトとレイノは日常を重ねるだけの退屈な毎日、嫌気を感じているが為す術がない。クラウディアとタチアナも同様で全員総じて覇気がない。それが独特の虚無感を倍増させている。偶然の巡り会いで二人の世界が一変する。

寓話の話。平然と行うママの監禁や解放、煙で見えないヘビースモーカーの食卓、無視さながらの女性との相乗り、異音の中、部品投げ捨てでの発車、紅茶と4/1切れサンドイッチのお礼等、非現実的な出来事が寓話性を匂わせる。また火炎放射器の寝押し、寂れたレコードプレイヤー、特殊なコーヒー器具等、新旧混濁の不思議なアイテムは要注目。

沈黙の話。ホテルの部屋決め、テーブルに残した2枚の食券、寝た手から抜く煙草、毛布を掛けて離れて添い寝。阿吽の呼吸はユーモラスで温かい。港での別れの直後、男達は追いかけて乗船、隣席から彼女の煙草に火をつける。目的や理由はないが、ここに安らかな気持ちがある。恋が始まる瞬間は秀逸。隣に座る、肩にもたれる、手を回し抱き寄せる、一連の行為は静謐ながらも劇的。まさに沈黙は金なり。

変化の話。レイノはタチアナの元に残る決心をする。彼はがさつな自分や変わらぬ日常と決別する。ヴァルトはクラウディアからコーヒーミルを贈られるが何もしない。カヘェ突入を頭の中で妄想するだけで、元の生活、以前の自分へ還っていく。変化は機会だ。

4スジ3ヌケ4ドウサ4テイジ4コノミ

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