ロケットマン

Rocketman

★★★
2019年/121分 #デクスターフレッチャー

主演はエルトン#タロンエガートン、バーニー#ジェイミーベル、シーラ#ブライスダラスハワード

主題はレナートやバーニーが語る「エルトンに才能があったのではなくレジーにこそ才能があった」。本人も同様にコメントも実は愛されている。

見所はエルトンがレジーを抱きしめる瞬間。彼はライブ直前に鏡の前で自分と向き合い本来のレジーに戻り会に出席、自分が愛されている事に気付き依存症克服の為に入院を選択、幼少期の自分を抱き締める。

原作はオリジナル。本作はタロンが実際に歌唱している。天才音楽家は同性愛者の自分を受け入れられず周囲の愛を渇望し苦悩の人生を歩む。

制作の話。エルトンは自分の人生は子供の観賞に耐え兼ね無いと企画を断るがスタッフは粘り強く交渉、曲は人生を時系列で紐解きながら誕生順ではなく本人視点で時代に相応しいものを採用、絶賛を受ける。

平安の話。エルトンは何十年も抱え続けた家族への怒りを見つめ直しレジー時代のありのままの自分を受け入れ心の平安を得る。「I Want Love」を他人行儀の家庭に不満を抱えた少年と家族に歌わせ、「I’m Still Standing」は施設入所以来、麻薬と酒を断った彼を当時のMVを使って再現する。

所在の話。天才は多感な幼少時代に冷酷な対応を受ける事で大きく傷付く。この事で彼は人並み以上の愛を求め始める。早くから成功を手中にした彼だからこその贅沢、人生で一番必要なものは金ではない事だけは確か。エルトンとバーニーの関係性は愛の在り方を再考させる。晩年の二人は会う度に泣きながら互いの膝頭を握り合っていた。

賞賛の話。エルトンはそのまま本当ではないが全てが真実とコメントする。スタッフはカンヌ初上映でエルトンとトーピンの反応を気にして上映中に何度も様子を窺う。上映終了後は4分間スタンディングオベーションを以て迎えられエルトンが抱きしめスタッフの耳元で賞賛の言葉を囁いた。タロンは涙しブライスは笑い出した。

再生の話。エルトンは血友病患者ライアン少年が病気を理由に学校から登校を禁じられた事を知り彼と交流を重ね、他界した半年後に麻薬と酒を断ちAIDS基金を創設する。彼は施設で1年依存症と闘い翌年バーニーとラブソング「The One」を生み出した。人は何かにすがりながらも再生し復活する。

婚姻の話。レナートはエルトンが自分の役を必死に演じている事を見抜いた上で純粋なレジーに惹かれる。二人の結婚は劇中で即破局の印象も実際は3年続いた。離婚理由も同性愛では無くタブロイド紙による執拗な誹謗中傷による夫婦の心労と二人の意見の相違。後にエルトンは新聞社に対して名誉棄損の訴訟を起こし勝訴、多額の賠償金を獲得する。

関係の話。エルトンとバーニーの関係性は冒頭の「Your Song」に集約される。この曲は愛の歌として完璧であり永遠に続く美しい絆を提示する。またバーニーは「Tiny Dancer」で自分と妻マキシンの関係を綴ったが二人が逢瀬を楽しむ中でエルトンが回想し歌う様は彼の孤独感を一層浮き彫りにした。

解釈の話。エルトンは自身が製作で参加した為、不可能を可能にした。ジャンルは時代考証が無い為に伝記ではなくファンタジー。本作は91年ルター病院治療中の彼が自分の人生を振り返り回想する出来事を覗く映画。時系列が替わり事実と異なる描写も記憶の断片、齟齬は当然の話。現在の自分が欲しい情報を過去の中から引っ張り出しているだけ、情報は勝手な彼自身の解釈。

言葉の話。エルトンは父に愛していると言われた事は無く、抱き締めたり、演奏も観て貰えなかったと語る。そして父の拒絶による寂寞や愛情の渇望がドラッグへと走らせたと振り返る。彼は言葉での愛情表現すら無かった事実をインタビューで伝えている「父に愛には限りがありプライベートな空間でも人前で愛情を示してはならないと教え込まれた」

演出の話。エルトンジョンは芸名で本名はレジナルドドワイト。名前は彼が自身の楽曲を持ち込む際、咄嗟に名乗る設定も事実はブルーソロジーメンバーのエルトンディーンとロングジョンボルドリーの二人から拝借、名前の使用はデビュー決定後に命名した。地味から派手な響きに変え格好も含めてセルフプロデュースする。

演技の話。彼は音楽界でのピエロを演じていた。評論家Cチャールズワースが評する「エルトンは内気な性格を捨てて派手な衣装を身に纏う様になった。しかし何故かわざとらしさはなかった。彼自身が自分の仕事を楽しみ聴衆にも伝えようとしているかの様で自分自身を笑い者にして面白がっている様にも見える」

宣言の話。エルトンは88年「Reg Strikes Back」を発表、これは押し殺した本当の自分を表現する彼の独立宣言。彼は新生すべく依存症の証明となるコレクションを一度に売却し病気を克服、支援活動にも取り組む。彼がスーパースターの名を欲しいままにしたのは才能と野心の賜物、その基礎は劣等感に苛まれたレジー時代に培われた。

3スジ3ヌケ4ドウサ4テイジ3コノミ

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