
新聞記者
★★★★
2019年/113分 #藤井道人
組織倫理と個人倫理の攻めぎ合い。本作を実現させた関係者の勇気を讃えたい。
背景の話。作者の望月衣塑子は社会部の部外者も森友加計問題担当。内閣情報調査室は官庁無力化の為の組織という事実。私の目には現政権が国民より政権維持や目標達成が第一優先に映る。
立場の話。杉原は上司から呪文「これも国を守る大事な仕事」を与えられる。反発しても次の呪文「子供が生まれるそうじゃないか」が続く。吉原は父から「誰よりも自分を信じ疑え」を与えられる。彼女は他の記者が少女を執拗に追及するのを見て「それ今する質問じゃない」と憤慨する。彼女の信念は記者としての真実追及である。
色彩の話。内調の部屋はモノトーン、彼の気付きに従い彩度が生まれる。SNSは政府の利用手段で配信する度に同調圧力は強まり束縛は鍾乳石の如く思想を蝕み侵食を始める。
盲目の話。両眼が潰れた羊は盲目で迷える存在、組織に仕向けられた神崎自身。死後手紙が彼の弱さを物語る。彼は国家の為に行動を重ねた結果、善悪の境目を見失い永遠の孤独地獄に取り込まれた。
善悪の話。大学設立は日本のダグウェイ設立。杉原は「君なら父親にどっちを選択して欲しいか」を胸に実名公表を覚悟する。直後に内閣参事官から異動取引と「この国の民主主義は形だけでいいんだ」の圧力が懸かる。茫然自失の彼と真実追求に希望も一抹の不安を抱く彼女が議事堂前で対峙。交わす視線と口話、相容れない二人が正義で繋がろうと努力するが社会が許さない善悪の彼岸。子供の遊び声が空しく木霊する。
5スジ4ヌケ4ドウサ4テイジ5コノミ