華麗なる激情

The Agony and the Ecstasy

★★★
1965年/138分 #キャロルリード

主題はユリウス発言「残念だが後世に残るのは私の武勲ではなくミケランジェロに絵を強要した功績だ」。物作りの素晴らしさを的確に伝える一語。

見所は創世記の神来。彼は山頂で雲が畝ねり人物を形作る神の啓示を受ける。

原作はアーヴィングストーン「ミケランジェロの生涯 苦悩と歓喜」。主演はミケランジェロ#チャールトンヘストン、教皇ユリウス2世が#レックスハリソン

感動の話。バチカン市内の宮殿にシスティーナ礼拝堂の天井画が存在する。これがルネサンス最盛期1508年から5年を費やしたミケランジェロの最高傑作。作品は祭壇壁の「最後の審判」の巨大フレスコ画やラファエロ原画によるタペストリーで構成、カトリック教義を絵画化する。装飾の中心は「創世記」からの9場面、父なる神とアダムの指が触れ合う「アダムの創造」は奇跡の瞬間を抽出する。

困難の話。1506年にユリウスは天井画計画を立てる。当時の礼拝堂はキリストやモーセ伝の壁画群が当時の有名画家であるペルジーノ、ボッティチェッリ、ギルランダイオ等によって制作されていた。当初のユリウス構想は十二使徒の巨大な像を描く事であったがミケランジェロはそれを複雑なデザインに変更して最終的に約300人の人物像を含んだ作品となる。彼は制作に辺り仰向では無く直立を選択し首だけを傾け作品を描いた。

天才の話。本名は#ミケランジェロ ディロドヴィーコブオナローティシモニ。 イタリア盛期ルネサンス期の彫刻家、画家、建築家、詩人の万能人。88歳の長寿を全うした西洋美術史上における最高の芸術家。存命中は神から愛された男と呼ばれ当時の人々から畏敬の念を持たれる。彫刻の代表作は「ピエタ」と「ダヴィデ像」、何れも彼が20代で制作した作品。建築物はラウレンツィアーナ図書館、サンピエトロ大聖堂。

粗野の話。ミケランジェロは人付合いが苦手、孤独を好む性格で周囲にはお構い無しの無頓着な人物。その私生活は質素で禁欲的、食事は必要に迫られる作業であり無関心。服も靴も着けたままで洗練とは程遠く暮らしぶりは乱雑で生涯弟子も取らず勝手気儘で粗野な人物であった。

幕開の話。レオンシャムロイ撮影によるサンピエトロ大寺院の空撮は当時と現代に境界線が存在しない事を証明。ミケランジェロ作品の紹介から彼が彫刻家である事が強調されシスティナ礼拝堂の天井画は元来は本意での制作で無い事が説明される。教皇と芸術家が権力と芸術の狭間で意地を張り主張と反発を繰り返す。

依頼の話。1508年ユリウスは建設したシスティーナ礼拝堂の天井画家にミケランジェロを指名し十二使徒のフレスコ画制作を命令。ミケランジェロは画家では無いと固辞するが許諾は得られない。後援者メディチ枢機卿と妹コンテシーナに相談も儘ならず渋々製作に乗り出すがユリウスお抱えの建築家ドナントとの軋轢や先の見えない仕事に嫌気が差し仕事を放棄、ローマから姿を隠す。

神来の話。ブラマンテは後任として新進気鋭のラファエロをユリウスに推薦するがユリウスは提案を退けミケランジェロの捜索を命令。ミケランジェロはカララの石切場に身を隠しローマの捜索隊を逃れ山頂に避難、そこで旧約聖書創世記の神来を受ける。彼はユリウスの下を訪れ天井画の題材変更を依頼、許可を得て制作に乗り出す。彼は人が変わった様に作業に没頭、寝食も忘れ絵を描き続ける。

災難の話。ミケランジェロはユリウスや枢機卿達の干渉、恋人コンテシーナからの求愛も退け一心不乱に作業に没頭。しかし作品は遅々として進まず業を煮やしたユリウスは彼に何度も完成を迫る。彼は焦燥に駈られ徹夜で作業するが視力は低下し意識は朦朧、疲労が蓄積して足場から転落し入院してしまう。

配慮の話。ミケランジェロはコンテシーナ介護の甲斐もあり快方に進む。ある日ユリウスが自ら彼の見舞いに参上、ミケランジェロは解任と後任にラファエロを据える様に告げられる。しかしそれはミケランジェロへの情熱を再び甦らせる為のユリウスの配慮であった。

復活の話。ミケランジェロは見事復活を果たし精力的に作業を再開する。時を同じくしてローマに仏軍が侵攻、独軍も参戦しフェラーラとボローニャが同盟を組みローマに反旗を翻す。ユリウスはローマを守る為に戦争の準備を進め始める。

許可の話。ミケランジェロが作業場に向かうと足場の撤去が始まっており彼は猛然と抗議、ユリウスからは天井画公開の為の処置と呆気ない回答。彼は画家の権利を主張するがユリウスの怒りを買い解任される。彼はローマからの退去を決意するがコンテシーナはユリウスが如何に天井画を愛しているかを伝えて励ましを与える。彼は再びユリウスから絵を描く許可を貰う。

時代の話。ユリウスは英国やスイスの幇助で外圧を退けた後に創世記を題材とした天井画「アダムの創造」の完成を目にして驚嘆。ミケランジェロは病床に就いた彼をかつての自分が受けた様に勇気付ける。1512年遂にシスティーナ礼拝堂の天井画は完成、ユリウスは彼の偉業を称える。ミケランジェロ37歳、彼の時代が始まる。

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