
The Beguiled
★★★
2017年/94分 ソフィアコッポラ
主題は監督インタビューでの発言「女性達は年代によって男性に求めるものが違う」。見所は提案と合意の場面。マーサはエミリーに特殊な茸を探す様に指示しジョンへ振る舞う事を提案する。少女達は静かに合意する。原作はトーマスカリナン「ザビガイルド」。66年発表の小説で71年のドンシーゲル「白い肌の異常な夜」のリメイク。原本が脱走兵の男性視点に対し本作は幽閉された女性視点で描かれた恐怖映画。
原作の話。原本には黒人奴隷が登場するが本作には登場せすエドウィナは白人と黒人の混血だったが本作は白人。この事からコッポラはホワイトウォッシングの実施を噂されたが彼女は反論、論争へと発展した。
視点の話。淑女達は三者三様の愛情表現を見せて女としての一面を露にする。遠くから見つめ好意を仄めかすエドウィナ、ウイスキーに誘い距離を縮め好意を匂わせるマーサ、夜中に侵入し不意に唇を奪い好意を行動で見せるアリシア。周囲との距離感を図り自分なりの行動で突き進む姿勢は女性を的確に表現している同性ならではの視点。
対比の話。静かな森の中で厳かな雰囲気を持つ洋館、清楚で華奢なドレス、透き通る白い柔肌、金色に輝く絹の様な髪は繊細で優美な佇まいを見せる。それらに対比させる様にマクバニーと淑女達が見せる欲望が渦を巻き周囲を呑み込んでいく。その生々しさが本作ならではの持ち味となっている。
淑女の話。1864年南北戦争3年目のバージニア州、舞台はファーンズワース女子学園。少女5人と教師エドウィナ、校長マーサの白人淑女7名が暮らす中でエミリーは脚に重傷を負う北軍伍長ジョンマクバニーを発見し学園に連れ帰る。淑女達はキリスト教義に従い敵軍となる彼を看護、南軍には通報せずに治療後の帰還を皆で決定する。
欺瞞の話。女の園に久し振りの男性が現れ彼女達は色めき立つ。全員が身形を整え化粧を施し口実をつけては彼に接近する。従来とは異なる他人を欺き自己実現を図る女の姿が浮かび上がる。マクバニーは状況を楽しみ回復後も庭番として学園に居座る。
遭遇の話。マクバニーは保身の為、全員に気に入られる為に画策を始める。最初にエドウィナに甘い言葉「君が一番美しい」と連呼し駆け落ちを約束。アリシアからはキスの洗礼を受けてご満悦、マーサにも色目を使う。彼はある夜、エドウィナの部屋に行くと約束、彼女は新品のネグリジェと香水を着け彼が訪れるのを待つがアリシアの部屋から物音がして指導の為に訪れると二人の情事現場に遭遇する。
動転の話。エドウィナは錯乱、マクバニーは説得を図る。二人は揉合いの末、彼が階段から転落して失神。マーサの診察結果は複雑骨折に壊死、脚を切断する事での救命を決断する。術後に覚醒した彼は片脚切断の事実を受け入れられず動転し暴言を吐き銃を手に威嚇。彼を心愛するエドウィナは静かに彼の部屋を訪れ契りを結ぶ。
謀略の話。マクバニーの行動と変貌を目の当たりにしてマーサ達の嫉妬心が蠢き出し、憎悪が肥大化を始める。アリシアも場の雰囲気を察して簡単に彼を裏切る。マーサは送別会を兼ねての食事会の開催を宣言、皆で彼を笑顔を以て招待する。彼も乱暴な振舞いを謝罪、双方和解し祝宴が開催される。
解毒の話。マクバニーは泡を吹いて苦悶。一人殺害計画の茅の外となったエドウィナは彼の遺体を前に立ち竦むが、結束した女達の眼差しを目の当たりにして言葉を閉ざし、その輪に加わるしか成す術は無い。翌朝、女達の手により彼の遺体は布に包まれ屋外へ搬出される。学園の門には南軍への合図の印となる青布が結ばれた。
本気の話。少女達は全員で啜り泣きを見せる。ジョンは無責任な男ではあるが紳士的で優しき一面も持ち合わせていた。そんな素朴な彼に純粋なエドウィナは容姿だけでなく人生も肯定され、本気で彼を好きになっていた。少女達はそれを身近で見て肌で感じ取っている。
3スジ4ヌケ3ドウサ2テイジ3コノミ