
The Greatest Story Ever Told
★★★★
1965年/199分 #ジョージスティーブンス
主演はイエス#マックスフォンシドー、ヨハネ#チャールトンヘストン、マリア#ドロシーマクガイア、ヘロデ#ホセフェラー、カイアファ#マーティンランドー、サタン#ドナルドプレザンス、ユダ#デヴィッドマッカラム、シモン#シドニーポワチエ。
主題はゴルゴダの丘の一言「この男は真に神の子であった」。ジョンウェインの語りで我々は世にも美しい磔場面を目にする。
見所は最後の晩餐。この場は厳粛なる課程、伝承の正式配置とは異なるもののダヴィンチ絵画の実像を見た錯覚に陥る程の荘厳なる瞬間。
原作はフルトンアワスラー「偉大な生涯の物語 イエスキリスト伝」。世界劇場初公開時は260分、オリジナル版は未発表。数場面の演出はデーヴィッドリーンが担当。
遺産の話。歴史を絵画的に描写、場面毎の美しさは一枚の絵を見るに等しい。芸術は人間の五感に響くものではなく魂を揺さぶるもの、ある意味では退屈な作業であり、高い集中力を要する訓練に等しいもの。本作はキリストの生涯を物語として見せるものではなくキリストの存在を映像的に再現する事に主眼を置いた価値あるものとして映画遺産に値する。
配役の話。本作における配役の豪華さには目を見張る。更に驚愕すべきは当時の花形スターの側から本作の出演を渇望したという事実。マックスフォンシドーを筆頭にCヘストン、Cベイカー、Sポワチエ、Vヘフリン、Hファーラー、Dマッカラム、Tサヴァラス、Pブーン、Dプレザンス、Mランドー等の豪華布陣が物語に花を添えた。Aギネスも出演予定であったが叶えられなかった。
表現の話。イエスは長髪で無精髭、使徒を率いて練り歩く姿は現代で言えば自由人、本作のキリスト像は威厳と優美なる雰囲気を漂わせたジーザスそのものである。彼が説く教えの中でも歩けない男性に向かっての説法は人間への核心を尽く一言「貴方は歩けないのではなく歩かないのだ」。音楽はアルフレッドニューマン。壮大且つ神聖な楽曲が本作の質を高める。佳局場面ではGFヘンデル「メサイア」やGヴェルディ「レクイエム」が劇的に使用される。
四方山の話。撮影監督ウィリアムCメラーは本作の撮影中にセット上で心臓麻痺となり逝去した。また2000年前のエルサレムの街を再現する為にアリゾナに広大なセットが建造され著名人が多数見学に訪れる観光名所となる。本作を観ればスターウォーズが新約聖書の世界観を継承した事が理解される。サヴァラスは本役でスキンヘッドとなるが後に彼のトレードマークとなった。
象徴の話。ヨハネは蝗と蜂蜜を主食とする体格的には貧弱な人物だがヘストンは筋骨隆々、その戸惑いは隠せない。ピラトの審判で男が叫ぶ「イエスを磔にせよ」。煽動するのは人間の中に巣食う悪魔である。クレネのシモンはイエスと共に十字架を運び、彼の最期を目にする。彼は無言の中にも強い反発の意志を現している。
写実の話。神の子の誕生を輝星が知らせる。東方の三博士がベツレヘムの牛舎へと導かれる。賢人は黄金と乳香に没薬を捧げ救世主の降臨を静謐に祝賀、聖典に準じた崇高なる幕開け。ヘロデ王は予言されていた救世主の誕生を知り2歳以下の幼児の皆殺しを指示、大工ヨセフは危険を察知して故郷のナザレに帰還を決める。旧約聖書の一篇モーセ誕生とイエス誕生は輪廻する。
結束の話。ヨハネは悔い改めよと民に伝道、30歳のイエスに出逢いローマの圧政に苦しむ民衆に彼こそメシヤ、天国が到来した事を告げる。イエスは旅の途中で十二人の使途を得て更に姦淫の罪で民から暴行を受けるマグダラのマリアを救出し一路ガラリヤに向かう。イエスは亡者ラザロを復活させ盲目の老人を治癒する等の奇跡を実現し、民衆熱狂の中でエルサレム入城を果たす。民衆の狂喜乱舞とは対照的に祭司や長老や学者達の有識者は邪宗を広める者と見なし糾弾。集合体の結束は大きな力となるが、反発も大きく綻びが生じ始めれば人間の醜悪なる部分が一気に拡がりを見せる。
印象の話。イエスは最後の晩餐で「裏切者がいる」とユダに改悛を求め告解を迫りペテロには予言を与える「鶏が鳴く前に3度私を拒む」。皆にはパンを分身、ワインを血液として配る。ピラト総督による民衆裁判で殺人者バラバは恩赦、彼には十字架刑が宣告、ゴルゴダの丘では憐憫と祈祷の声が木霊し雷鳴と豪雨の中で暗雲が地上を覆う。イエスは死後3日目で復活の奇跡を遂げる。「私は世の終りまでいつも貴殿方と共に居ます」
至高の話。雲海がうねりを見せ、地面は強い表情を見せる。人物は感情や時間を静止させる。油絵のような強い色彩感覚と奥行きのある構図は見事で唯々美しい。蒼白の色別は復活の光陰、新世界の幕開けを告げる。ラザロの奇蹟で見られるハレルヤのコーラスは壮大な叙情詩となる終幕。
4スジ5ヌケ5ドウサ4テイジ3コノミ