
The Handmaiden (아가씨)
★★★★
2016年/145分 #パクチャヌク
原作はサラウォーターズ「荊の城」。主題は女性の解放。韓国は儒教により未だ家父長制が残る国、終幕は抑圧に立向かい困難を克服した女性の尊さを表現。見所は珠子が秀子の歯を削る場面。口内は粘膜に包まれた性感帯、全てを許した者だけに触れさせる場所。珠子の指は動きを止めず奥迄入り込む。
視点の話。3部構成で主観的に状況を捉えていく。1部は珠子、2部は秀子、3部は現実の「羅生門」方式。上月は親日家の朝鮮人、日本の没落貴族の娘を嫁にするが死別し全財産の相続権は姪の秀子に移る。彼は秀子を屋敷に軟禁し嫁取りの機会を伺う。詐欺師の藤原は情報を掴み日本人伯爵に変装し屋敷に潜入、仲間の珠子を侍女として派遣した。
変化の話。藤原は秀子に求婚するが、珠子は天涯孤独の秀子に親密以上の感情を持ち始め次第に彼に反抗を見せる。珠子は秀子の不安を払拭する為、初夜の方法を教える名目で彼女と枕を共にする。秀子は藤原と初夜の営みを終えて鮮血で汚れたシーツの横にあどけない表情で佇む。そして計画通り藤原と珠子は秀子を精神病院に送る。
真実の話。二人は濃厚なる愛の交歓を経て心をも解放する。珠子が抱擁しながら呟く「私もお乳が出ればお嬢様に飲ませてあげられるのに」。珠子は上月の書庫の資料を怒りのままに処分する。秀子は容姿や資産にしか価値を見出だせない男達とは対照的に大きな慈愛と憐憫で接する珠子に心奪われる。
愛憎の話。39年韓国日本併合の時代、秀子は着物に日本髪で紳士達に官能文学を朗読する。彼女は別計画で自分の身代わりの施設入所を画策しているが、珠子の叫び「何も知らないお嬢様を私がお守りしないと」を受け愛が蛇の様に絡み出す。
因襲の話。秀子は幼少期からの脅迫観念により屋敷に囚われの身となる。書庫には北斎「蛸と海女」、拷問部屋には大蛸水槽。醜悪な生き物に快楽を与えられる春画は彼女の精神を崩壊させ異常性を植え込んだ。上月は局部の収集や艶話でしか快楽を得られない男。藤原は初夜の営みを彼に質問され「ナイチンゲールの歌声が聞こえる様でした」と答えた。男達は全て異常だ。
快楽の話。藤原は「女は力づくの関係で快楽を得る」と語り秀子は「現実の女は力づくの関係で快楽を得る事は無い」と応える。初夜の鮮血は手を切ったもの、二人は関係を結べずに終る。終幕で二人は新天地ロシアに向かう。穏やかな波の上で真実の愛鈴を鳴らす。
演出の話。監督は暗色一貫、距離感とユーモアに拘りを見せる。撮影の暗色は桑名の六華苑、日英和洋折衷の建造物が舞台。部屋には太縄や蛇の神秘的置物を配置。密室となる書庫には深遠なる闇が続く。距離感はユーモアとの配合を調整する事で物語を成立させる。監督は「此方から見て観客の気持ちが密着し過ぎれば笑いで距離を離し、離れ過ぎれば笑いで入れ近づける」と語る。ユーモアは使い方次第で恐怖や悲哀、感動を倍増させる。
4スジ4ヌケ4ドウサ3テイジ3コノミ