The Housemaid （하녀）
★★★
2010年/107分 #イムサンス
主題はフイが平然と｢産んでください｣と出産を支持する場面に集約される。ここに富豪と一般人との思考のズレを見る。この発言も果たして本意か他意かは藪の中。見所はウニの流産場面。血液が浴槽の底に広がる光景は衝撃的。原本は60年キムギヨン｢下女｣。監督曰く｢現代韓国の階級問題を正面から描きたかった｣
因果の話。ウニは狭い部屋で女友達と重なって寝る貧困女性。彼女は女史と呼称される先輩家政婦ビョンシクの面接を経て富豪宅で働き始める。富豪フイはテンペスト第3楽章を奏でる趣味人､奥様ヘラは双子を妊娠中。ウニが浴槽を洗浄しているとフイが帰宅し太股を見て欲情､就寝中の彼女の元へワイン片手に上半身裸で現れる。彼女の中で欲情が覚醒する。彼女はフイの命じるまま下半身に顔を埋める。
醜悪の話。女史はウニの妊娠に気付き大奥様に密告､彼女も生き残りの為に必死である。大奥様は堕胎を目論見､偶然の失敗を装いウニを2階から転落させる。この事故を発端に彼女の妊娠は周知され､ヘラはウニに平手打ちを重ね追い出しを謀る。富豪達の小切手は名刺代わり､転落時も妊娠発覚時も差し出せば解決する免罪符と思っている。彼等の価値基準は金銭であり､その事に何の疑問も抱かない。唯一娘ナミは祖母による故意的仕業と吐露して謝罪､子供の純粋な眼差しと大人の醜い打算を鮮やかに対比させる。
旅先の話。水遊びの時にフン一家は内風呂に浸かり寒さから窓を閉めるが､ウニは屋外待機。ここでも格差が見え隠れするものの彼女は無邪気に水遊び。風習として定着した韓国の現在が映し出される。
暗中の話。フイが出産後に屋敷に帰るとウニは優雅に入浴中､彼女は妊娠告知､家族発覚､出産決意を一気に暴露する。ウニはヘラの服毒により浴槽内で出血､意識を失った彼女は大奥様の主治医から強制的に中絶手術を受けさせられる。ウニは女史から真相を聞き復讐を宣言､彼女の復讐は子供の喪失。娘ナミの記憶に潜入し両親が起こした惨劇の悔恨から彼女が新たな惨劇を発生させる事を企んだ計画と推察する。
凝視の話。ウニは女史の手引きで富豪宅に潜入し双子を抱く。その姿を見たフイは動揺し彼女から双子を奪い取る。この駆け引きは緊張感満載。彼女は2階に上がり皆が見ている前で因縁のシャンデリアを使い首を吊る。突如の出火は果たして計画か？狼狽する富豪家族の中､ナミだけが無表情で火達磨を凝視している。
冒頭の話。繁華街で女性が投身自殺する姿が韓国の世相を現している。顔は映らず観衆もざわつくだけで大事に至らない。命の価値は何時から軽くなったのか。
虚空の話。ナミの誕生日が訪れパーティーが開催される。新たに双子と家政婦が仲間入りし､周囲は祝賀ムード一色も彼女は無言で上の空。憮然とした表情のまま､斜上の天空を見つめる。天空には写し出されているのは何か？
4スジ3ヌケ3ドウサ4テイジ3コノミ
