
THE KING OF COMEDY
★★★★
1982年/109分 #マーティンスコセッシ #コメディ
個人的作品。ジェリールイスと実母の出演で本作の成功が約束された。二人が虚構と現実の境界線を曖昧にする。
侵食の話。冒頭パプキンは「お前らとは違うんだよ」と聴衆を罵倒、空想は既に始まっている。彼は部屋で人気番組を再現し自分をゲストで呼ぶ。やがてジェリーを同僚から親友に昇格させ空想を妄想に進化させる。妄想は止まらない。彼の才能をジェリーが称賛し両手で顔を撫で回す程の愛情を持ち始める。妄想が実像を侵食する。そして誘拐が現実の箍を外した。強い自我が強要を生み暴走が始まる。
防衛の話。聴衆ボードを前に演説しご満悦なパプキンや、椅子にミイラ縛りされるジェリーは滑稽だ。恐怖と快楽は相反するが相似した感情で、人は緊張した時に自己防衛として緩和の笑顔を求める。彼の柔和な姿勢は実は内向的な性格を示している。
尊厳の話。ジェリーも事務所の人間も彼をパンプキン、パッファーと間違え他社の尊厳を軽視している。常識的と思われたリタも別荘で辱しめを受け謝罪はするが密かに置物をバッグに忍ばせる。彼女も同類だ。
自尊心の話。「彼の意見ですか」が権威主義を象徴、彼は名声の為なら犯罪も厭わない。番組ではキングを表明するが自尊心を充足させただけで聴衆は羨望ではなく好奇での目で見ている。彼は世間や彼女に格好良い所を見せたかっただけ、「どん底で終わるより一夜の王になりたい」が刹那的で破滅型の人格を顕す。米国の国情も同様だ。
4スジ4ヌケ5ドウサ4テイジ3コノミ