マイヤーウィッツ家の人々

The Meyerowitz Stories

★★★
原題は#TheMeyerowitzStories
製作は2017年/110分 #ノアバームバック

主演はダニー#アダムサンドラー、マシュー#ベンスティラー、ハロルド#ダスティンホフマン、ジーン#エリザベスマーヴェル、モリーン#エマトンプソン、イライザ#グレイスヴァンパタン、ロレッタ#レベッカミラー、ジュリア#キャンディスバーゲン、ランディ#アダムドライバー、本人#シガニーウィーバー

主題はマシューが皿を叩きつけ囁く一言「許すよ、許して、ありがとう」。ハロルドは死から生還するが何の変化も見られず毒舌は健在に献身的な子供達の介護には全く無関心である。彼は深く失望し父に距離を置く。そして家族は再度離散状態に突入する。

見所はハロルドの傍若無人ぶり。彼は周囲を無視し他者に決して迎合しない。彼はレストランの上着騒動で自らの間違いを認めず相手やマシューに謝る気配を見せない。寧ろ決まりの悪いマシューが彼を慰める始末、救いようの無い迷惑な大人である。

原作はオリジナル。最低な父親をダスティンが演じた事は奏功、彼独特の可愛いらしさは憎めない個性を醸し出し全体を柔らかく包み込む。一歩間違えれば悲惨な話となるが、配役の妙が全体を助ける。ノアは「#イカとクジラ」にも通じる絶妙な部分で恐怖を喜劇に変えている。

諦観の話。本作は怪物の下でトラウマに苛まされる子供達の物語。姉弟は大人の中年男女で父は周囲と衝突する余力もなく達観する老境、現実世界でも劇的変化は期待出来ない様に物語は淡々と進む。ノアは人生とはこんなものと諦観、その先にあるものは何かを語り掛ける。

暴君の話。ハロルドは一線を退いた有名彫刻家。彼は子供や周囲を蔑ろにして生きてきた自己中心的な人物。異母兄弟となる3人は父の我が儘に振り回されながらも彼の愛を求めて付かず離れず生きてきた。彼はビリヤードでキューを叩き折り長男にも遺伝する暴言を吐く「クソッタレ」

卑小の話。ハロルドは野球中継で贔屓のチームが不調だと不機嫌になりテレビを消し、息子が予約したレストランでは店員の態度が気に入らないと店を変えさせる。かつての競争相手LJの展覧会ではタキシードで体裁を整えるも格の違いに思わず逃亡、シガニー自慢が関の山。自己の評価は尊大も実態は卑小、自覚も無い為、たちが悪い。

小心の話。ダニーは愛娘イライザが全て、溺愛するが18年の専業主夫経験がそれを阻む。その生き方は自らの将来を奪い不安と苛立ちを残した。彼は路上駐車出来ずに怒鳴り散らす。正規の場所を利用せず不法な場所を探し苛立つ姿は楽をしてやり過ごしたい彼の本質。クラクションを鳴らされ他人にはキレるが家族には怒れない小心者。彼は自分の駐車位置を見つけられない。

異端の話。マシューは芸術一家では異端児となるスーツ姿で働く会計士。一般的には成功者も内面はその類いではなく商売相手にも若干ナメられビジネスマンとして羨望を集める存在ではない。彼は芸術家になれない自分に劣等感を抱き心を閉ざしている。家族の一員として貢献したいと感じているが此等が引け目となり一歩前に出られない。彼も駐車位置を見つけられない。

出発の話。ジーンは駐車位置を見つける事を早々に諦める。目立たぬ存在の彼女は心に深い闇を抱えているが、それを気にする素振りも見せずに一家とは一定の距離を置いて向き合っている。彼女はイライザの作品に出演を果たし嬉しそうに笑う。駐車位置からの移動が彼女が変われる最大の好機。

瞬間の話。ノアは偏屈なままに老境を迎えた人間が如何に醜悪かを徹底して描く。また人物同志の衝突はジャンプカットを多用し一時的感情の爆発は問題とせず振り返りこそ人生には重要とのメッセージを投げ掛ける。怒りを表に出さず人の醜悪さを押し出し耐え忍ぶ人生にも喜びや楽しみを感じる瞬間がある語り口は希望に溢れる。

発見の話。例え身内でも分かり合えない部分があり善意や親切も響かない人間はいる。それでも人生は続く。終幕ではイライザが美術館でハロルドの抽象彫刻♯7を発見する。彼女が眼を輝かせて呟く「見つけた」。離散した家族が集まる話の始まり、家族は離れる事もあるが切れる事はない。

3スジ3ヌケ4ドウサ4テイジ3コノミ

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