
Underground
★★★★
1995年/171分 #エミールクストリッツァ
旧ユーゴの半世紀に渡る苦難を神話化した。彼等が持つ血の歴史を映像化する方法はファンタジーしか選択肢は無かった。
青史の話。国と人に歴史あり、因果的に二つが一つの繋がりを持つ。セルビアがクロ、クロアチアがマルコ、モンテネグロがナタリア、スロベニアがヴェラ、ボスニアがヨヴァン。イヴァンが語りかける「苦痛と悲しみと喜びなしには子供達にこう語りかけられない。昔あるところに国があった」
諷刺の話。記録映像に登場人物が紛れ込む合成が多用される。41年ナチス爆撃、44年連合軍爆撃とユーゴスラビア共和国誕生、そしてチトー大統領の葬儀。監督は当時の雰囲気を伝えると共に一笑に付した。トリエステ紛争場面ではマルコがプロパガンダ演説、チトー大統領の葬儀ではブレジネフ、アラファト、サッチャーら各国の首脳が参列する。
調和の話。主旋律は民族音楽を編曲した激甚な吹奏楽団のジプシー曲。音に乗せて奏でる物語は狂騒的で禍々しく動乱を極める。また第二次大戦中の独国で大ヒットを飛ばしたリリーマルレーンが随所で挿入、この曲は連合軍からも人気を博した為に国内で禁止された代物で劇中では皮肉的効果を醸し出す。
発端の話。マルコはパルチザン義賊で詩人の共産党員。ベオグラードではナチの共産党員やパルチザン狩りが進む中、彼は闇社会で頭角を表し一族郎党を集め地下室で武器の密造を始める。
裏切の話。マルコとクロが恋する女優ナタリアは保身の為にナチ将校フランツの恋人となる。クロは奇襲し彼女を強奪するが結婚式の最中にナチス襲撃を受けナタリアは戻りクロは捕獲され拷問を受ける。マルコは二人を救出する為にフランツを暗殺するがその時クロは大怪我を負い寝たきりとなる。その後マルコは祖国解放戦争で武勲を上げチトー大統領の側近となるが仲間にはナチとの戦争は続いていると嘘をつき武器密造を続け利益を得る。ナタリアもクロから奪い妻とする。嘘が嘘を生み出していく。
混沌の話。マルコと妻ナタリアはユーゴ共産党政府の幹部となり、クロを祖国解放戦争で亡くなった英雄として銅像を建て映画を製作する。地下世界では未だ第二次大戦中と信じている。クロの息子が成長し結婚するが式の最中にナタリアが酔ってマルコとの関係を暴露、マルコは自分の脚を銃で撃ちその場を凌ぎ、クロは映画の撮影班を本物だと思い込み彼等を血祭りにあげる。混乱が加速を始める。
逡巡の話。ドナウ川で生まれて初めて太陽の光を浴びるヨヴァン。クロは彼に泳ぎを教え父の愛を示すがその最中に撮影班虐殺事件の犯人を追跡するヘリの銃撃を受けヨヴァンは水中で妻エレナと幻想的再会を果たしながらドナウ河に消える。マルコとナタリアは欺瞞に耐えられず地下室を爆破し政界からも姿を消す。そしてチトー大統領が暗殺され国はまた混迷に包まれる。この物語に終わりはない。
4スジ4ヌケ5ドウサ5テイジ3コノミ